« やれやれの火災報知機 | トップページ | 寒い寒い開校記念日 »

2010年3月 9日 (火)

“化ける”ということ

 以前、あちこちの書評で取り上げられ、私自身もちょっと読んでみたいな、と思った本があった。『宇宙エレベーター』という本。著者は、アニリール・セルカンという人。本の紹介とともに掲載されていた著者の経歴を見て、(いやぁ、世の中すごい人もいるもんだ)と思った記憶がある。
 今やすっかり経歴詐称で有名になってしまった彼だが、ついこの間まで、東大の助教だったとか。他にも、トルコ人初の宇宙飛行士候補だったとか、数々の論文があるとか、amazonの本書の紹介文には“ケンブリッジ大学物理賞、アメリカ名誉勲章など数々の栄誉に輝く”なんていう触書もある。そして何より、amazonのブックレビューを見ると、かなりの人が彼の本で感動しているのだ。
 実のところ彼の真の業績はわからない。あるサイトには、トルコのコメディアンだったと書かれているし、実に詳細な検証ページもあるが、真実は闇の中。超一流(?)の詐欺師が人に夢を与えるように、彼もずいぶん多くの人に夢を与えていたようだ。『水の伝言』とか“マイナスイオン”などにも熱心なファンがいるように、彼は実際、魅力的な人物だったのだろうと思う。彼が盗用して作り上げた論文も、かなりのクオリティで巧妙な仕上がりだったのかもしれない。。。
 私は今回の話に触れて、日々のネットサーフィン等で仕入れたネタを、さも自分で見出した知識のように思い込んで、おしゃべりやレポートなどに安易に取り込んでしまうことの恐ろしさを思った。「○○なんだって!」「○○って書いてあった」という出典ありきの話が、やがて「○○なんだよ」という自己主張に変わっていく過程は、人それぞれの咀嚼の問題。そのあやふやさは、ちょっと他人事じゃない。
 先日もこんな話を聞いた。ある雑誌に毎月掲載される書評が、大量にamazonのレビューで盗用されているのだという。盗用している人がどんなつもりでそういうことをしているのかわからないが、いかにも立派な書評を大量に投稿している自分に酔ってしまっているとしか思えない。そうやって“化けて”いるうちに、本当にその人がそういう書評を書けるようになっていくかもしれず、ある意味、“子どもの真似事”のようでもある。
 子どもは何でも真似する。真似することで成長もする。大人だってロールモデルを探して真似することはある。でも、真似が度を超すと詐欺になる。著作権の難しさもここにある。

|

« やれやれの火災報知機 | トップページ | 寒い寒い開校記念日 »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« やれやれの火災報知機 | トップページ | 寒い寒い開校記念日 »