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2012年2月 8日 (水)

『ダイバーシティ』

20120205 先週、夫がamazonでハードカバー本を買った。
「興味あれば先に読んでいいよ」と言われたのでパラパラと繰ってみたら、なにやら自己啓発本の香り。「なんでこんな本買ったの~?」と訊くと、「新聞の書評読んだら、いい本みたいだったから」とのこと。それにしても、ざっと見では、およそ夫が面白がるような内容ではなさそうな気がしたので、「この人、大丈夫かな?」と心配になった。(自己啓発本に手を出すなんて、どこか精神的に不安定な感じがしたものでsweat02
 まぁ物は試しと、奥付とか著者略歴を眺めてみたところ、山口一男さんというシカゴ大学の社会学教授が書いた本と知り、先の日曜日に一気読み。というか、最初は恐る恐る手に取って試し読みを始めたのだが、止まらなくなって一気に読んでしまったというべきか。よくある自己啓発本などではなく、社会を啓発するような本だった。
 大きく2部立てにされた本書、1つ目は「六つボタンのミナとカズの魔法使い」というファンタジー仕立ての社会科学的物語、もう1つは「ライオンと鼠」という教育劇だった。1つ目の方はいろいろデジャ・ヴがあってサラリと読んだのだが、2つ目がものすごく面白かった!
 山口氏が大学で行った講義の再録的な形式で展開する第2話は、サンデル教授の「白熱教室」のようで、学生の反応や先生の臨機応変な対応から目が離せなくなった。
 ちょっぴり法律をかじるようになって以来、いつも「公正とは何か」と考えるようになったけれど、この2つ目の話に触れて、ますます考えさせられた。「ライオンと鼠」とは、言うまでもなくイソップ物語の寓話のタイトルだが、アメリカ版と日本版では微妙に違う、という導入から、それらを現代版に書き換えて、比較文化的な考察をする…という試みなのだが、その中で、現代日本が抱える大きな問題がクローズアップされてくる。教育とか子育てとか社会システムの重要さを再認識。安直な解答など提示できない問題だから、もちろん結論めいたものはないのだけれど、学生たちのいろいろな視点から繰り広げられる意見の応酬が楽しかった。息子にも、こういう講義を受けてもらいたいもんだ!と思いながら本を閉じたら、タイムリーといおうかシンクロといおうか、息子がおかしな発言をした。
 「中学の先生って、ツッコミやすいんだよね~」―――
もちろん、小学校でお世話になった先生方も皆、魅力的で熱心な先生方だったのだけれど、まだ年端のいかない年少者に対しては、多少権威的にならなければ統率は難しかったろうと思う。それに比べると、中学での授業は、意外に生徒が自由に発言できているのだろう。
 「それは、先生が対等に接してくれてるってことだろうね」と言って笑ったのだが、ただの詰め込み授業がされているんじゃないことが感じられて嬉しかった。
 たった1コマの授業でも、本書の第2部のような展開にするのはかなり至難の技だとは思うけれど、奇跡の授業は、ダイバーシティを認めた教室でこそ成り立つものなのかもしれないなぁ。とかく経営戦略的に語られるばかりの「ダイバーシティ」だが、もっと人間の本質的な部分でこそ、まずは語られるべきなんだな、と思った。

 同著者の『ワークライフバランス』という本も面白そう。。。

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コメント

山口一男様

 ご本人からコメントいただけるとは!お忙しい中どうもありがとうございます。

 ご著書、楽しく拝読させていただきました。様々なシーンで「議論を!討論を!」と言われながら、意見を発することで対立や歪が生まれる昨今の政治等を見るにつけ、「何か本質的な資質が足りない…」と思われされていますが、先生のご本に、こうした状況を打破するヒントがあるように思えました。
 一朝一夕ではいかんともしがたいことですが、ダイバーシティの精神のエヴァンジェリストとして、今後もどうぞご活躍くださいませ。

投稿: Taraco | 2012年2月19日 (日) 07時50分

Taracc様
  感想をありがとう。著者です。「奇跡の授業は、ダイバーシティを認めた教室でこそ成り立つものなのかもしれない」というのは、正解がなく、皆で考えを深めていくべき内容の教育には、まさにそうだと思います。
  今の日本社会で起こっている様々な問題、正解はないので、よりよい道を見つけるためには多様な知識や意見を持つ人の対話や協力が必要です。でも、実際は、知識や意見の違いが対立を生み、ものごとが決まりません。多様性や違いをポジティブに考えることからまず教育で養う必要があると感じます。

投稿: 山口一男 | 2012年2月18日 (土) 19時33分

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