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2016年5月29日 (日)

脳みそしぼってエンタメ守れ!

 昨日、友人に付き合ってもらい、「エンターテインメント・ロイヤーズ・ネットワーク」という団体主催のシンポジウムに参加してきました。「脳みそしぼってエンタメ守れ! ~アートやコンテンツ保護の闘い~」というタイトルでした。
 出版社勤務時代、他社や権利者との契約に絡んで、法務部とちょくちょく話し合いを持つ機会がありましたが、その頃よく思っていたのは、「この人たちは本当に、良好関係を大切に、いいものを作ろうとして契約を考えてくれているんだろうか?」ということでしたが、法律を多少齧ってみると、当時の法務部の言い分もわからなくもなくなっています。
ただ、組織に所属しなくなってみると、「本当に作品に貢献している人に、相応の還元がされているのか?」という目で見ざるを得ず、最適解のバランスという問題意識が芽生えてもいました。そんな中での参加でしたが、これがまぁ、とても面白いシンポジウムで、誘った友人も大変喜んでくれてホッとしました。

 基調講演はアーティストの村上隆さん。以前、攻殻機動隊のイラスト著作権処理でカイカイキキさん(村上さんが代表のマネジメント会社)の(c)許可をいただきましたが、奥ゆかしいクリエイター群の中で、村上さんほど自身の権利をしっかり主張する方はなかなかいないという認識のもと、どういう意識でお仕事に取り組んでおられ、コンテンツビジネスに対して、どんな問題意識を抱えておられるのかを聞きたいというのが、最優先事項でした。以下、備忘録。
・芸術はビジネス、アーティストはアントレ・プレナー
・日本におけるアーティストは、社会のヒエラルキーの最下層のような待遇で、
 コンテンツそのものにお金をかけないで、ハコモノにばかりお金をかける傾向
・日本は資本主義を完全には甘受せず、クリエイター自身もお金のためだけに働くわけではない
・社会情勢により、権利者側に寄る時代と、利用者側に寄る時代が揺れる
・日本の芸術界からは干され気味で、売上は日本0%、中国35%、他イタリア等…
・芸術家も弁護士もサービス業で、顧客のシズル(旨み)感を的確に捉えて仕事すべき
 (ユーザーが求めるものから始め、ユーザーが驚くものへと進化させる)
・オリジナリティのボーダーラインを模索中

 村上さんと、司会の久保利英明先生との出会いは、朝日新聞の「be」に久保利先生が取り上げられた際、村上さんが相談を持ち掛けたのがキッカケだったそうですが、久保利先生もアーティストよろしく、暇さえあれば海外旅行をして感覚を研ぎ澄ますことに余念がなく、目下167か国制覇しているのだとか! 代理人とクライアントという関係ながらも、お互いに刺激し合って、よい相乗効果を及ぼし合う関係のようにお見受けしました。
 また、パネルディスカッションの方も興味深いネタ満載で、AI著作物・応用美術の著作物性・パロディやオマージュ・公開の美術の著作物等に対しての、弁護士さんたちの考え方が聴けて、とても参考になりました(ただ、全体的に、“エンタメを守る”という課題解決の視点は薄かった印象)。
 AI著作物については、具体的な議論において、AIのプログラムやアルゴリズムの内容をきっちり検討しないことには何とも言えない、という印象を持ちました。AIの定義は?というのは、Intelligenceの定義は?というのと同じで、ひと昔前の人工無能と揶揄されたような類のものから、昨今話題のDeep Learningのようなものまで幅広く、到底ひとくくりに語ることはできないと思われます。
 TRIP TRAPP事件の知財高裁の判断については、否定的な先生が多かったのが、私には驚きでした。おっしゃる通り、保護期間50年は長すぎだとか、翻案権まで認めるのか等、問題もあることは確かですが、Fine ArtとDesignってそんなに違う? アーティストとデザイナーって、区別されるべき?という素朴な疑問を禁じえません。インダストリアル・デザイナーでも、アーティスト以上のこだわりをもって仕事する人はたくさんいるし、アーティスティックでないデザイナーさんはデザイナーじゃないと思うのですが。。。
 パロディ・オマージュに関して、フランク三浦事件も話題には上りましたが、はっきりとした弁護士さんたちの考え方は表明されないままでした。ここは、最高裁の判断を待ちたいというのが法曹界のスタンスなのでしょうか…?
 オリンピック・ロゴの話もチラリと出ましたが、こちらは、法的には何ら問題なかったと解される、というのが共通認識のようで…(苦笑)。
 いずれにおいても、はっきりと白黒つけられるものの方が少なく、著作権って本当にケースバイケースで難しいな、と改めて思いましたが、それは弁護士さんも同じなのだと感じられ、少しホッとしました。
 最後の質疑応答では、正規の相続人がいなくなっても、相続財産管理人の手を離れるまでは国庫には帰属しない、なんていう話や、肖像権の使用料支払いを求められても支払う義務はない、なんていう話など、実務的な話題も聞くことができました。
 NHKで権利処理のお仕事をされている方もいらっしゃったようで、シンポジウム後の懇親会で、是非お話を伺ってみたいと思いましたが、後の予定もあったので、友人と早々に退散せざるをえず、残念でした。
 いやぁ~、思い切って聴きに行って本当に良かった! 貴重な機会を、どうもありがとうございました!

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