2020年7月29日 (水)

『進化した猿たち』

20200718  今月半ば、星新一さんのエッセイ集『進化した猿たち』を読了。
 星新一さんのショートショートには、学生時代にずいぶん親しんでいましたが、最近はご無沙汰していたところ、本屋で偶然見かけて衝動買い。星さんは、欧米の一コマ漫画を蒐集するのが趣味だったのですが、それを分野別に分類し、それぞれについてエッセイを綴った雑誌連載をまとめたもの。言われてみればショートショートって、かなり一コマ漫画的。頭の体操や、価値観の転換が容易にできるという点で、共通項が多いですね。
 ところで、本書の最初のエッセイが、「ぬれ手でアワ」というタイトルなのですが、なんとなんと、発明や弁理士をめぐる一コマ漫画について書かれていました! かねがね、超マイナーな弁理士という職業を紹介するコンテンツを探しており、『下町ロケット』とか『閃きの番人』とか『ストーリー漫画でわかるビジネスツールとしての知的財産』とか『ぼくは愛を証明しようと思う』など、わずかながら無いこともない…という状況でした。
 そんな中、この1つ目のエッセイの扉には、“EDISON AT THE PATENT OFFICE”というタイトルで、弁理士が“You again?”とあきれている一コマ漫画が掲載されていたのです(笑)。星製薬創業者の長男だった星さんが、幼少時から弁理士を知っていたであろうことは想像がつきますが、本作の話の展開にはいささか度肝を抜かれました。
 なぜなら、まず、「人類の理想とは、ぬれ手でアワといった調子で大金をつかみたい、の一語につきる」と始まり、その本能の発露の第一の形は犯罪。第二の形はギャンブル。そして第三が「特許出願」と書かれていたからです(苦笑)。いつものブラックジョークなので、どこまで本気かわかりませんが、星さんにとって特許は、ぬれ手でアワの実現に寄与するものと映っていたのですね。一度は発明熱に取りつかれ、どちら側からも足を突っ込めるサンダルを考案して、実際に特許事務所に出願依頼までしたそうで! 残念ながら、先行出願があり、ぬれ手でアワとはいかなかったようですが、弁理士ネタの一コマ漫画の蒐集作品が三十種くらいはあるとのことで、是非全部見てみたいなぁ~と思いました^^;。
 このエッセイは、未来予知的に、「この装置はですね、特許の調査、書類作成など手続きを一切安くやってくれる弁理士ロボットで…」で終わっています。近い将来、「ほうれ、見たことか」とおっしゃるような状況になるのか…。(人間が審査している間は、AI利用は中途半端なままだと思っているんですが…^^;;)
 とりあえず、個人的な近々の興味は、今年の「第8回 星新一賞」で、AIの作品がどのくらい一次審査を通過するのか、ということ(笑)。

【Patent2020.7】 奇しくも、今月の『Patent』の巻頭の「今月のことば」で、弁理士業務のAIによる自動化について書かれているのを読みました。人間の文章作成能力の証明のため、弁理士諸君、星新一賞に応募して、入賞しよう!とハッパをかけられているようでした(笑)。

SUITS】 アメリカ版ドラマ「SUITS」を見始めたら、第3話に特許出願の話が出てきました。Season1の公開は2011年で、この当時のアメリカは先発明主義。先願主義の施行は2013年3月16日なので、今見ると違和感がありますが、(発明日の証明は難しいながらも)やっぱり理念的には、(権利付与はともかく)先に発明した人の名は刻まれるべきだよな~と、知財を勉強し始めた頃の思いが蘇りました^^;;。

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2020年7月12日 (日)

『ペスト』

20200621_5_20200704140001  今月頭、アルベール・カミュの『ペスト』を読了。20世紀初頭にペストという感染症によって隔離されたオランというアルジェリアの一都市を描いた本書と、21世紀初頭に新型コロナウイルスという感染症によって半隔離された東京という一都市の状況が、かなり重なって見えたことは確かでした。また、“抱き付きおじさん”が出たり、紙やハッカ飴の買い占めが起きるなど、預言的な描写がそこここにあるのも、人間のサガを見定める作家の目に驚きを禁じ得ません。
 ただ本書は、本扉裏のダニエル・デフォーの引用言(エピグラフ)にある通り、“ある種の監禁状態を、別の監禁状態によって象徴的に表現”しているだけであって、別に感染症の話がメインテーマではありませんでした。
 カミュは、27歳で地方新聞の記者になるまでに、自動車部品販売人、船舶仲買人、市庁吏員、測候所員など、雑多な職業を転々とし、ドイツ軍のフランス侵攻をきっかけにオラン市の私立学校へ赴任して、教鞭を取りつつレジスタンス運動をしていたとのこと。
 本編には、医師リウー、大判事の息子タルー、吏員グラン、オトン予審判事、記者ランベール、パヌルー司祭、犯罪人コタール、喘息持ちの老人など、それぞれバックグラウンドの異なる人たちが登場しますが、その大部分に、著者であるカミュの一側面が隠れているようでした。また、語り口が実に淡々として客観的で抑制的で、その全体から、カミュという人の誠実さが立ち上っているような印象でした。
 個人的には、中盤と終盤の、タルーとリウーの、神や正義についての会話のシーンが秀逸だったように思っています。また、リウー医師の人柄がただただ素晴らしく、また、彼を陰で支える母親の慎ましさと自然さが善良きわまりなく、魅力的でした。
「あらゆる場合に犠牲者の側に立つことを決めた」タルーという人の痛いほどの“青さ”と、“書斎の人”ではなく“ささやかな努力の人”であろうと努める医師リウーの“堅実さ”の、両方が、作者であるカミュに備わっているのだと思うと、このコロナ禍という状況で、『異邦人』以来改めてカミュと再会できた幸せが、ココロに沁みました。
 目下、病院や隔離施設の最前線で、日々重症患者と向き合ってくださっている医師たちの中にも、きっと、リウーのように淡々と黙々と、ただひたすらに新型コロナと向き合い、際限なく繰り返される敗北と、気まぐれな勝利とに翻弄されつつ、粛々と知識を蓄えてくださっている方々がいるのでしょう。。。そんなある種の監禁状態の中でも、友情や信頼や愛情が、誠実な営みの中で育まれていることを願います。
 ただ自粛生活を送るだけの自分は、さしずめ本作の中の気楽な大衆の一人ですが、未知の感染症で不本意に亡くなっている人が確実にいることは、忘れずに過ごしたいと思います。

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2020年6月27日 (土)

脚本家がらみの本4冊

20200618_3  新型コロナウイルスで外出自粛だった期間、ずいぶんたくさんのアニメやドラマや映画を観ました。「いいなぁ~」と思った作品の脚本家さんをメモっていたら、冲方丁さん、野島伸司さん、野木亜希子さん、古沢良太さん、黒田洋介さん、福田靖さん、櫻井武晴さん、大森美香さん、太田愛さん…etcetc…と、どんどん名前が連なってしまいました^^;;。
 どうも私は、小説となると、洋書の翻訳本は読む気になるのに、なぜか日本の作家さんのものは敬遠しがち。なのに、ドラマやアニメだと和製のものでも共感度が高く、その理由は未解明(もちろん、日本人の作家さんでも好きな人はいますが…苦笑)。
 そこで、脚本家の仕事はどんな風に為されるのか?という所からこの謎を解明しようと、ここ数か月で、脚本家がらみの本を4冊読みました。いわゆるノウハウ本なので、面白いわけではないのですが、唯一、『脚本家という仕事』という本は、すごく面白かった!!! 今をときめく関係者の方々にインタビューして著されたモノだからでしょうが、「こういうのが読みたかったんだよぉ~!」と、著者のペリー荻野さんに感謝しきり!
 かと言って、上記の謎が解明されたわけではないのですが、小説と脚本の違いはだいぶ認識できました。脚本家には、小説家よりもずっと、客観性や共感性や集中度が求められているようです。余計なものを削ぎ落し、自己満足やひとりよがりを極力廃す。フレーム内に目で見えるものとセリフだけで表現する。視聴者の視聴覚体験を頼りに“何か”を伝え、委ねる姿勢ーーーとでも言いましょうか…。

2020061920200621_5  …ということで、メディア論に触れるべく、次は『マクルーハン理論』へ!(『ペスト』も母から入手) SDGsだの5G/6G、ウィズコロナ等が怒涛のように押し寄せて、“メディアの文法”が大きく変容するさなかに置かれている動揺を、なんとか落ち着かせたい。。。時代によって移ろうメディアと人の、役割や在り様について、考えてみたいところです。

2度目の二十歳】 昨日、ご近所さんのメーラー設定のお手伝いに赴き、ついでにいろいろ世間話。近所の銭湯が廃業になる話とか、近くに出来たワインバーに今度一緒に行こうとか、高須医師の整形遍歴の話とか、近所の測量の話とか、etcetc…。また、最近ハマったドラマの話を聴き、「2度目の二十歳」という韓流ドラマを勧めていただきました~(このご近所さんは、イ・サンユンさんのファンなのだそうで)。韓流ドラマを観過ぎて、物事をズバズバ喝破する性格へと、人格変貌中なのだそうで^0^;;。ご近所さん曰く、「やっぱりドラマは脚本よね!」。同感です~(MIU404第1話も面白かった!)。

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2020年6月 8日 (月)

『逆ソクラテス』『ストーリー』

20200523_1  先月、息子のススメで読み始めた『逆ソクラテス』という本を読了。「逆ソクラテス」「スロウではない」「非オプティマス」「アンスポーツマンライク」「逆ワシントン」という5つの短編から成り、いずれも小学生を主人公にしつつ、彼ら彼女らが大人になって当時を振り返ったり、パルプフィクション的にそれぞれの物語が微妙に重なっていたり。。。
 全編通して、先入観や決めつけはご法度…というのがテーマになっている感じでしたが、どうして息子は本書を読め読めと勧めたのかな…?? 私が何か、先入観や決めつけで息子を困らせてる??! 特に思い当たるフシがなく、単に「おもしろいから読め」ということだったと思うことにします^^;;;。
 歳で頭が硬くなっているのか、本作中での、“パワハラ”や“いじめ”の否定理由と、自身の考え方とで、相違する所もあったりしましたが、一方、青春時代をバスケットに捧げ、後悔を残したまま大人になった身としては、本書のラストシーンには心を動かされました。人生、悔やまれることは多いけれど、そこで終わりじゃないってことですね~。

20200605 【『ストーリー』】 もう一冊、つい先日読了したのが、ロバート・マッキーの『ストーリー』。コロナ禍で家に閉じ籠もり、やたらと色々な映画やドラマを観たせいで、脚本家と小説家と劇作家の仕事の違いを知りたくなって読みました。職業によっても、使う言語・言葉が違うように、これら三者も実は大きく違うことがわかりました。

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2020年5月 2日 (土)

『ネンドノオンド』

20200424_1  ETV視聴をきっかけに知った、プロダクト・デザイナーの佐藤オオキさんの表題書籍を、過日読了。世界中の著名なデザイナーの方々と会い、雑談混じりにインタビューを重ねた誌上対談をまとめたもの。ICレコーダー抜きで対談相手の懐に飛び込んで個性を引き出し、自らの学びの糧ともしてしまう構成に唸りました。こういう本を読んだ後は、「あ~、本って安いよな~」と感動します。いつものように、素敵な言葉に付箋を貼っていったら、結構な数になってしまいました。
 デザインとは無縁の暮らしの私ですが、有名デザイナーの言葉には、クリエイティブなどんな仕事にも通ずる真理が垣間見えます。「結局は人の意識を変えることがクリエイションであって、カタチじゃないの」「すべてのアイデアは日常からいただく。日常を観察することが大事なんだよ。この目でね」「イタリア語には“プロジェッティスタ”と呼ばれる職業があって、少し先の未来を見据えてプロジェクトを実現する人のことをこう呼ぶの」「読書をしたり文章を書いてる時間の方が長いかな。創作において“文字”はすごく重要だからね」ーーー
 インタビューは以下の17デザイナーを巡って行われました。
1. Barber & Osgerby
2. Luca Nichetto
3. Michele De Lucchi
4. Ronan & Erwan Bouroullec
5. Tom Dixson
6. Patricia Urquiola
7. Philippe Starck
8. Jean-Marie Massaud
9. Kengo Kuma
10.Alfredo Haberli
11.Konstantin Grcic
12.Marcel Wanders
13.Jasper Morrison
14.Thomas Heatherwick
15.Ron Arad
16.Claesson Koivisto Rune
17.Alessandro Mendini
 7番目のスタルクさんは、浅草のキントウン「スーパードライホール」を設計した人だし、9番目の隈さんは、新国立競技場「杜のスタジアム」を設計した人。他の方々のデザインも、きっとどこかで目にしているはず。それにつけても、こうしたお歴々が皆、「nendo」を当然のように知っていることが、なんだか誇らしかった~♪ 日本のデザイナーさんが世界で通用してるってことは、日本発の意識改革も夢じゃないってことだもんね^0^!

【本のノド】 上記の3番目に登場するミケーレさんという方が、手帳の紙を綴じる「のど」が嫌いで、スケッチもスケジュールも、冊子の「のど」を気にせず見開きで描くとおっしゃっていました。エディトリアル・デザインという点で、私も「のど」の存在はやや疎ましく感じることが多く、本書も、ペーパーバックサイズで横書きで組版されているのだけれど、見開きのページで、何度も「のど」ギリギリの部分の文字を読まなければならないのが、ちょっと苦労しました。縦書きの日本語って、見開きのうち、真ん中の2行くらいを苦労して読めば、あとはスルっと読み進められるので、紙の書籍向きの文字だよなぁ~…としみじみしてしまいました(笑)。

【connel coffee】去年、あるカンファレンスに参加した折に立ち寄り、その雰囲気に痛く感動した草月会館内のカフェ“connel coffee”。偶然にも、このカフェの床と家具のデザインが、nendoさんのものでした! 感動~♪

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2020年4月30日 (木)

『問題解決ラボ』

20200421_1  表題の書籍を、先週読了。プロダクト・デザイナーの佐藤オオキさんが、「週刊ダイヤモンド」に連載していた記事に加筆修正して著された本で、各項もコラムも手頃な長さで、サクサク読める楽しい本でした。
 デザイナーさんの仕事が、どんな風に為されているのか、あまり当事者的に覗いたことがありませんでしたが、大きく「職人型」と「発想型」に分かれるとのこと。著者の佐藤さんは「発想型」で、世界のトップブランドが採用するデザイナーは「発想型」が多いのだけれど、日本は99%「職人型」らしくーーー。日本の大企業ではインハウスのデザイナーさんが「職人型」のデザイナーさんに外注する図式が目に浮かびます。「発想型」だと、とかく組織の枠を飛び越え、根本的な改善を求めることになったりするので、致し方ないのかな…と思いつつ、コレって、デザイナーさんに限らず、知財部門にも当てはまるな…なんて思いながら読みました。
(問題解決を生業にする仕事は多々ありますが、問題が顕在化するより前に、問題になりうる種を見つけて、その発現前に行動を起こすことも大事だな、、、と思う今日この頃です。)
 4章の9,10項が、「ブランドとは信頼」というエッセイだったのですが、こんなところでも、デザインと知財の親和性を感じました。知財が世の中の問題解決を目指すのと同様、デザインも、問題解決によって世の中を善くしていこうというものだからなのでしょう。「発想型」の著者が伝えてくれた“発想”のコツとしては、
・とりあえずやってみる
・あらゆるものをフラットに見る
・オモテからもウラからも見る
・疑い深くある
・自分がワクワクするか自問する
などなど。
 20歳そこそこの若い頃、戸山公園のホームレスの方々の飲み会に参加できるようになった時、彼らの住処が、自家発電でキンキンに冷えたビールを飲みながらナイター中継も見られるようになっており、室内犬を飼っていたりするのを目の当たりにして、吹っ切れたのだとか(笑)。「これがホームレスの生活だとしたら、もはや怖いものはない」とーーー。以来、常に玉砕覚悟でデザインに取り組んでいるとのこと。。。極端な逸話ではありましょうが、“「覚悟」のないデザインは簡単に見抜かれる”というのは、恐ろしいけど本当のことだと、私も常々思います。不思議だけど、人の熱意って、伝わるもんなんですよねー。。。
 近頃、あまり“熱い”仕事が出来てないな…と自戒しつつ、そっと本を閉じました。

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2020年4月29日 (水)

『新しい分かり方』

20200416_3  先々週、表題の書籍を読了。ピタゴラスイッチでお馴染みの、佐藤雅彦先生のご著書。紙の書籍ならではの味のある構成で、息子も私も数時間で一気読みでした♪
 いろいろ興味深い記載があって、到底全部の感想は書ききれませんが、電通勤務時代の女性の先輩のお話で、(咽頭ガンで声を失くしてしまったあとでも)文通の中では彼女の声が聴こえていたーーーっていうくだりが、印象的でした。
(ヒトの“認識力”の不思議さがいろんな側面から紹介される本なので、「感動のポイント、そこ?!」と言われそうですが^^;;)
 シンプルな本なのに、なんだか時空を感じさせられる本でした。。。

【ガマンWEEK】 学校や会社では、このGW明けも引き続き(5月いっぱいとか、前期通してとか)、外出自粛が延長になっているようですが、“ガマン”と思わず、この未曾有の体験を、なんとか楽しもうと思います。個人的には、JAXAによる、ISSを模した閉鎖空間でのストレス評価手法の実験に参加しているつもりで、心や身体の変化についてチェックしたいと思っています(まぁ私の場合、かなり散歩に出掛けているので、“閉鎖空間”の実験というよりは、“友人との対面おしゃべり封印”の実験が主ですが、、、笑)。

 

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2020年4月 7日 (火)

母の本

20200402  先月、母の本が完成。奇特な某出版社が、コンテスト経由で採用してくださったのです! 当初は信じられずにいた私も、編集者さんからの丁重なお手紙を見せてもらって、現実だと納得しました。
 今月半ば頃に、ちょっとだけ書店に並ぶようです。フィクションですが、私の祖父の生い立ちが色濃く反映されているようなので、書影はボヤかして(苦笑)。。。読ませてもらった印象は、「こういう朝の連ドラがあってもおかしくないな」というもの♪
 今期の朝ドラは、家族全員窪田くんファンなこともあり、フォローしていきたいと思っていますが、いろんな人の人生ひとつひとつが、まさにドラマですよねー。両親のドラマも、まだまだ展開しそうです♪ 応援するよー!

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2020年3月19日 (木)

『アンドロメダ病原体』

 新型コロナウイルス騒ぎに起因して、カミュの『ペスト』や、ダン・ブラウンの『インフェルノ』、野木亜希子さんの「アンナチュラル」第1,2話などを思い起こしつつ、真っ先に手に取って読み返したのは、マイクル・クライトンの『アンドロメダ病原体』でした。作者が医学部出身という理由もありますが、学生の頃に興奮して読んだ記憶がいまだに色濃く、未知の病原体の科学的分析の経過を想像するという観点からも、今まさに、各国の感染症研究所で進んでいるであろう新型コロナの「理解」の舞台裏を覗くつもりでーーー。
 読み始めてまず仰天したのは、コンピュータ技術の進展の速さ! 本作は、当時の最先端のその先を活写しているはずだったのですが、メインフレームをタイムシェアリングで使っていたり、ユーザインタフェースも稚拙で、ロール紙に味気ないデータが出力されるなど、隔世の感でした(笑)。
 また、今回の新型コロナに、“花崗岩が効く”というフェイクニュースが流れたようですが、本作中に、三つの品物「黒い小さな布切れ、腕時計、花崗岩のかけら」が生きていないと証明できるか、というくだりがありました。岩石には三十億年の寿命があり、人間の生きるスピードとは桁が違うことを認識するなら、「ある種の生物については分析不可能」ということもありうることを認めねばならない、という、ある作中科学者の主張。もしかしたら、このくだりに起因したフェイクニュースだったのかしらん??(ネットによれば、花崗岩がテロメア長を伸ばす、というmixi日記が発端との説も^^;;;;;)
 本作の恐ろしい病原体は、早々に変異して、無害化するのですが、とはいえ、未知の病原体への恐怖は、今も昔も変わらず。今、対応を迫られている新型コロナウイルスに対し、“戦う”という表現が用いられたり、“恐怖を煽るようなデマ”が拡散したりしていますが、こうした現象に関して、以下に、本作から2つの論説を引用しておきたいと思います。

(旧版第25刷、P.247より)
 人間は細菌の海の中で暮らしているともいえる。細菌はどこにも存在するーー皮膚表面、耳や口の中、そして肺臓や胃の中にまで。人間が所有するもの、手を触れるもの、呼吸する空気ーーそれらはすべて細菌でいっぱいである。細菌はあまねく満ちあふれている。そしてたいていの場合、だれもがそれを意識していない。
 それには理由がある。ヒトと細菌の両方がおたがいになじんで、一種の相互免疫を作りだしたのだ。それぞれが相手に適応したのだ。
 そして、これにもまたりっぱな理由がある。進化が潜在的生殖能力の増加を目ざしていることは、生物学の一つの原則なのだ。~(※)~

(旧版第25刷、P.303より)
 人間の知能は役に立つときよりも不都合なときのほうが多い。…人間の知能は創造的であるよりもむしろ破壊的であり、啓示よりもむしろ混乱を、満足よりもむしろ失望を、愛情よりもむしろ憎しみを、もたらすことのほうが多い。
 ・・・既知の宇宙でもっとも複雑な構造物であり、栄養と血液に関して肉体にとほうもない要求をしている人脳が恐竜に似ているとは、だれも考えたことがない。ひょっとすると、人間の脳は、人間にとって一種の恐竜となっており、最後にはその滅亡をもたらすのかもしれない。
 すでに、脳は人体の血液供給の四分の一を消費している。全血液の四分の一が肉体の質量のわずかなパーセンテージしか占めない脳という器官に、心臓から送りこまれる。もし、脳がより大きく、よりすぐれたものになれば、おそらくそれはより多くの血液ーーひょっとすると伝染病のようにその宿主を消耗させて、かんじんの肉体を滅ぼすほど大量の血液ーーを消費するかもしれない。

 ヒトのスケールに見合った適度な知能を保つ脳、ゲーム理論的にみる生物各種の共存と変異、そんなものを真面目に考えさせられるエンタテインメント本、なかなかないと思います! 再読してよかった~♪

20200318_3 【次は?!】 まだ読み終えてないがあるのですが、次はコレを読みた~い! 『なぜ科学はストーリーを必要としているのか ~ハリウッドに学んだ伝える技術』!

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2019年11月 6日 (水)

『わたしが正義について語るなら』

20191028  は~ひふ~へほ~
 息子が小さい頃、アンパンマンのアニメを観たり、アンパンマンのパペットで遊んだりはしていました。
 が、やなせたかしさんの絵本は、本屋で立ち読み程度、やなせさん自身のことも、あまり知らないままここまで来ました。

 先日、ひょんなことから手に取った『わたしが正義について語るなら』。中高生くらいの子ども向けの実用書にはどんなものがあるかを調べていて出逢ったのですが、実に読みやすく、数時間で読み終えました。漢字が少ないのもさることながら、さすが「詩とメルヘン」の編集長の文章、人柄がにじみ出て、やさしく読みやすい柔らかい文体ーーー。
 マンガ家を目指しつつ、あれこれと依頼されるままに様々な仕事をこなし、「困った時のやなせさん」と言われていたのだとか。宮城まりこさんと仕事をする中で成長した、と述懐されていました。(三越の包装紙のmitsukoshiという文字を描いたのがやなせさんだという話は、どこかで聴いたことがあったような、、、)。
 やなせさんなりの“正義”について、いろいろ語ってくださっていましたが、アンパンマンのマーチの中の「愛と勇気だけが…」のくだりが理解できるようになった気がします。多様性の時代、正義の捉え方もどんどん難しくなっているのを感じます。
 RADWINPSの「愛にできることは~」でも、アニメ「バビロン」の中でも、印象的に“正義”が語られていますが、とりあえず私でも出来そうなことは、「これは誰にとっての正義か?」と、いつも問うてみる姿勢を保つことくらいかなぁ。。。

【ヘリウム品薄】 昨日のニュースで、ヘリウムの供給不足が報じられていましたが、真っ先に浮かんだのがリニア新幹線。。。核廃棄物処理場未整備のままの原発見切り発車のごとく、液体ヘリウム供給源未確保のままリニア新幹線工事が見切り発車されてる、なんてことは、よもやないのでしょうねぇ。。。

 

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