2017年4月19日 (水)

並行読み♪

20170412_8  近頃は、小説やらエッセイやら実用本なんかを読み散らかしている感じでしたが、新年度ということもあり、目下、興味に従って著作権がらみの本2冊を並行読みしています。
 家の本棚を眺めていたら、『デジタル著作権』という本が目に留まり、パラパラしてみたところ、2002年の刊行と古い割に、内容はすごく堅実で良さそうな感じ。。。“積ん読”だったのか、読んだ記憶なし。。。amazonで評価を見ると、星3つで高評価ではないものの、硬派な書き手でとっつきづらいというだけで、真の評価ではなさそうな感じ(?)。
 福井先生の『18歳の著作権入門』は、以前から読んでみたかったのに放置していた本。2015年初版だから、ネット時代の問題が満載に違いなく――。
 この2冊を読み比べることで、21世紀初頭からの15年間で、著作権法がどのくらい、どのように、現実の技術世界に対応してきたかが、見えるかな~…と期待して。おそらく、まだまだ、『デジタル著作権』の著者の方々が描いていた形には程遠い状況なんだろうと予想しながら、のんびりと読み進めています。
 『インターネットビジネスの著作権とルール』とか、『クラウド時代の著作権法』って本も、以前読んだはずなんですが、内容をすっかり忘れているので、このへんもペラペラめくりながら、TPP騒ぎが収まって少し落ち着いた2017年度最初の、真面目な読書にしたいと思います♪

【これからの著作権法】 …『18歳の~』は既に、先週末に読了していますが、最終章(20章)で、1983年の時点で早くも「オプトアウト」式の“超流通”の仕組みを提唱されていた筑波大の森亮一先生のことを知りました。また、先日、AI の知財問題につき、中村先生が議事録を公表してくださっていました。これまで騙しだまし現実に対応してきた著作権法ですが、いよいよドラスティックに変わらざるを得ない時代??!

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2017年4月 5日 (水)

『トヨトミの野望』

20170403_1_2  遅読の私が、たった2日で完読したKindle版『トヨトミの野望 小説・巨大自動車企業』――尾張の某自動車企業を想起せざるをえない、というか、一瞬“暴露本”?とも思えてしまうほど、関係各位には登場人物の現実の顔が思い浮かんでしまう冷や汗本かもしれません。とはいえ、“事実は小説よりも奇なり”を無理やり小説仕立てにしたような、剛胆な叩き上げ経営者をめぐる群像劇で、抜群の面白さ。
 日本の名だたる大企業が軒並み苦境に立つ21世紀初頭、いわゆる大企業病が蔓延し、寄らば大樹の軟弱化する社員が増える中でも、ビジネスの最前線では命を削って、自社や日本の将来を守ろうとする人たちがいることを感じられました。極度のコスト・カットや、在庫軽減の負担を下請けに回すような施策のすべてを支持するわけではありませんが、“統べる”ということの厳しさや責任の重さは、想像を絶するもので、非情にならざるを得ない場面も多々あることを、経営者視点で納得したり。
 個人的には、「腐らず諦めず、動き続ければなにかに当たる」というフレーズに勇気をもらいました。物語の中に、2人の新聞記者が出てくるのですが、もしかしたらこの2人のうちのどちらか、あるいは2人が、本書の著者ではないかと想像します。そして、この2人が惚れ込んだ型破りの稀代の経営者の功績が、有名自動車企業の歴史から葬り去られそうな状況を打開すべく、本書が執筆されたのでは…とも。さらに、“ペンは剣より強し”を地でいくように、昨今では珍しい硬派な記者が、時代の趨勢を読み、自動車産業に参入するニューフェイスの動きを予期して、国内の自動車企業各社に対し、「出世レースで右往左往している暇なんてない、ガソリンを燃やしてる場合じゃない!」と檄を飛ばし鼓舞しているようにも感じました。奇しくも、読後の翌朝のNHKニュースでは、スズキ自動車の社長が登場し、“選択と集中”による環境配慮を声高に宣言していました。トランプ政権下、ますます激動の時代に入りそうですが、本書の“動く人達”のバイタリティを教師として、果敢に苦境に立ち向かって欲しいなぁ!
 世界を相手にするには、ロビー活動が非常に重要であるとは思っていましたが、本書を読むまで、アメリカでのロビー活動には、政府への登録が必要だとは知りませんでした。あとは、公聴会のシーンで、プリンス社長の苦境を救うかのような発言をした、ケンタッキー州の女性議員がカッコよかった! 日本の政治家にも見習って欲しい!!
 大きな企業の一社員にとって、とかく人事異動での勢力地図の塗り替えは、恰好の酒の肴になりがちですが、“自分はどっち派”なんてセコい見方でなく、本書のような大所高所の視野が大事だな、と思いました。
 新年度で、街でも新人さんと思しきリクルートスーツの若者をよく見かける季節、まだまだ自分の貢献は小さくとも、大きな流れを良い方に変えていく意識で、日々の小さな一つひとつの仕事に取り組んで欲しいな、と思います。あ、それ以前に、私自身がもっと、何かへの貢献を意識した仕事をしないと(笑)!
 刺激的で面白い本を、ありがとうございました!

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2017年4月 4日 (火)

『いのちの車窓から』

20170330_1  発売日当日、近所の書店さんで本書を購入。そそくさと、先週末には読了しました。
 私は、「文章」という文章が好きだったかな~♪ どうして文章を書くのか?という問いに答えたエッセイ。
 多くの人が、年齢を重ねると、丸くなり、感謝の気持ちに溢れてくる傾向にあると思うけれど、彼はある意味老成しているのか、人一倍そんな気持ちでいっぱいなように感じます。
 いつだったか、NHKの「LIFE」という番組で、「あなたの人生は今、何点?」という質問に、その時の自分の年齢を応えた星野さんを見て、「い~ね~♪」と共感しました。どんな生き方をしていようと、人間はきっと、生きた時間分だけ何かしら豊かになっている…と思え、人生ってイカす♪と思えました。本書も、そんな気持ちにさせてくれる一冊でした。素直なエッセイを、どうもありがとうございました~!

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2017年3月29日 (水)

『誰がこれからのアニメをつくるのか?』

20170326_5  長年アニメ業界をウォッチし続けている友人が上梓した新書を拝読しました。
誰がこれからのアニメをつくるのか?』――アニメ旋風が吹き荒れた2016年が明けたこの時期の刊行は、グッド・タイミングだと思われます。
 アニメ・ビジネスにおいても、キーワードは「グローバル化」と「インターネット」。少子高齢化の進む日本の中だけにターゲットを絞るのはもはや現実的でなく、必然的に世界を目指さざるを得ない状況ではありましょうが、その際キーとなるのが、「中国資本」と「配信ビジネス」だとのこと。様々なデータを交え、業界の今後の未来予測をしながら、ポスト宮崎駿となりうるクリエイターを概観し、制作・製作者、配給・配信者等の新しいプレイヤーの可能性に迫る、充実の一冊。客観的データ満載でとても勉強になりました! 工夫次第で、まだまだコンテンツ・ビジネスの形も様々な可能性があると前向きに感じられます。
 クールジャパン構想のなりゆきは今ひとつピンと来てはいませんが、日本発のアニメが人の心を柔らかくし、世界を和やかにしてくれるものと信じて、陰ながらいろんな人を応援しています。年々、その豊穣さをアップデートするかのような昨今のアニメーションですが、制作現場の改善や、配信の工夫を重ねつつ、これからは、作り手もワールド・ワイドに協力し合う時代なのかもしれないなぁ~と思いながら本を閉じました。


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2017年3月22日 (水)

『Legal Design』

20170321_1  ちょっと時間がかかってしまいましたが、水野祐さんの『Legal Design』を読了。法律関連書としては異形の、お洒落な本。例によって付箋だらけ(笑)。「法とアーキテクチャの関係性を考察することが狙いの本」ですが、私としては、“インターネット後”の世代の人が、法律を通して社会をどのように見ているかを知るのが目的でした。以下、付箋箇所を見返しながら、印象的だった部分をメモ。

・p.6:「アウトバーン・デザイン」の思想は、法律にも応用できるのではないか
・p.11:現実の後追いしかできない「法の遅れ」という現象は、…インターネット以降の情報技術の動向が性急であることを前提に、人類史上かつてないほど広がっているように感じられる
・p.27:著作権制度が設計している「余白」がサイバーカスケード/ネットリンチにより「浸食」される可能性があるのではないか、という危惧
・p.35:クリエイティブ・コモンズは、国が決めた著作権法という法律ではなく、クリエイターとユーザーが互いに合意した条件でコンテンツの利用を簡易に、迅速に許諾する仕組み
・p.39:著作権制度を抜本的にリフォーム…その一つは、「禁止権」を中心とした著作権制度から「報酬請求権」を中心とした著作権制度にリフォームするもの
・p.41:北欧には「自然享受権」という権利が認められている
・p.68:私たちは、法という社会のOSを更新する必要がある。それは同時に、私たちのマインドセットも更新しなければならないことを意味する
・p.80:音楽史が進むなかで、メロディやコードといった有限な部分を権利で縛っていけば、やがて作れる音楽はなくなってしまうだろう
・p.83:同時多発的かつ双方向なリミックス文化の加速は、インターネット/デジタル技術によるリミックス文化の成熟、そして時代が「複製の時代」から「改変の時代」へ移行してきていることを示している
・p.87:日本には、原盤権を一括して管理運用できるような機関は存在しない
・p.93:現代の楽曲の創作性として、グルーヴやフィーリング、アンビエンスといったものも含まれるべきだ、含まれるとしてどの程度保護されるべきか、といった検討や主張は一定の正当性を持つようにも思われる
・p.95:音楽はアップデートを繰り返すソフトウェアのようになってくるのかもしれない
・p.99:ブライアン・イーノの『音楽の共有』からの抜粋文:音楽に関する権利の帰属や収益の配分に関する見直し…
・p.127:これまでのような…複製権に基づく出版ではなく、…送信可能化権に基づいて行われる出版が中心になる時代が来るだろう
・p.133:元来のアートにおける「一品制作」という性質から導かれる「所有」や「オリジナル」という特徴は、インターネット/デジタル技術による複製容易性および非劣化性と相克する
・p.142:フランスでは、いわゆる「追及権」という権利が法律上認められている
・p.166:写真が物質からデータに変化するにともなって、インターネットというアーキテクチャのなかでは、写真は誰のものか?というクリシェも変容せざるを得ない
・p.217:デザイナー・坂部三樹郎が…ファッションのフリーカルチャー性を部分的に肯定的に捉える言説を残している…
・p.225:アーカイヴの射程をいかに捉えても、そこに変わらず課題として生じてくるのが権利処理の問題である
・p.242:(情報量を残すことが最良?)…西洋音楽はなぜ楽譜という形で伝承されるのか。演劇はなぜ戯曲という形で残されるのか…
・p.253:従来は、情報と物質との間に境界・ハードルがあったため、制作者側にとっても、情報は著作権、物質は意匠登録すれば意匠権で保護されるという切り分けを前提とする二元論で一定の理解は可能であった。しかしながら…情報と物質の境界が融解し、シームレスになったとき、…納得感のあるものになるかは甚だ疑わしい
・p.269:現在日本には、820万戸以上の空き家があり、7戸に1戸以上は空き家だという報告がある
・p.288:附合契約から契約自由の原則への回帰の流れ
・p.316:出生、婚姻、離婚、養子など、それぞれのステージにおいて、従来法が予定していたモデルではない多様性が生まれてきている
・p.320:政治は国家や民族、家族、個人という概念と、それぞれの間に生まれる境界の存在を前提にしている。一方で、インターネットをはじめとする情報技術は…
・p.330:情報化社会において、法律の解釈・運用により生まれる「余白」や契約をいかに設計・デザインしていくかというリーガルデザインの思想が本書のテーマ…

 私のような年寄りですら、いろいろ「?」を感じる法律構成なのだから、インターネット後の若い世代の人には、時代錯誤と感じられる部分が多々あるのだろうなぁ~、と思っていましたが、「法の遅れ」を受容して、自分なりに方向性を模索しながら考察を続ける実務家の姿勢に触れ、できるところからトライしてみる堅実性を見習いたいな、と思わされました。(私の眼の黒いうちに、少なくとも産業財産権法くらいは、万国共通化されないかな~…) 

 唯一、やや残念だったのは、誤植がとても多かったこと。以下、ご参考までに、誤植とおぼしき記載のあったページ数のみ列挙して、増刷時の推敲に貢献したいと思います。
18、29、45、55、56、63、71、74、75、86、92、110、119、137、141、175、192、193、197、210、213、214、217、219、234、300、317、336

 

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2017年3月19日 (日)

『受験は母親が9割』

 中・高という、子どもにとってまだまだ大切な時期、“自立”という名のもとに息子をすっかり放置した自分を反省し、先日、Kindleで標題の本を購入して読みました。噂には聞いていましたが、自分とは価値観が違う人の著書だろう、、、と思い、手に取らずにいたのでした。
 本書を読み終え、愕然としているのは、母親業という仕事のTo Doリストの中に、「中高生の学習管理をする」という仕事をまったく加味していなかった自分自身の認識の甘さです(汗)。こんな風に手をかけてもらっているお子さんもいるのかぁ?!と驚き、(この本は息子の目には触れさせられない!)と内心大汗。。。(私だって、息子のことは十二分に愛してるんですけど~)
 単純な感想としては、「やるべきことをきちんと計画的にこなせば、実績は上がる」という淡白なものですが、子ども一人ではまず無理な上、親が協力したとしても、到底このご家庭のように計画通りにはこなせそうにないのが凡人の辛いところ。そして、何より堪えたのは、「仕事と子育ては、本気でやれば両立は難しい」という佐藤ママのお言葉。これは、私がずっと抱いている仕事と子育てに関する“中途半端感”を論破するものでした。そして、昨今の世の、“女性も輝く”とか“副業OK”とかの流れに一石を投じる言葉でもあると思います。
 著者の、この佐藤ママさん、そんじょそこらのコンサルさんやプロマネさんよりもずっと、子どもの教育に関する母親業において、プロフェッショナルと言えますね!。。奥付のプロフィールにあった“専業主婦”という文字が、立派な職業名として浮き立って見えました。

 我が家に関して、今から佐藤家のような環境づくりは、もはやできそうにありませんが、“一緒に楽しんで勉強する”ことだけは、実践したいという気持ちでいっぱいです。4人もお子さんがいて、家族みんなで同じテーマについて深く議論できるなんて、本当に楽しそう!!! “自立”に関する認識も、ちょっと改めないといけないかな…と思わされた一冊でした。

【後追い感想】 あとからふと、佐藤ママの兄弟への接し方が素晴らしいな、と思いました。兄も弟も妹もなく、皆平等に扱う。。。コレも、なかなかできることではありませんね。一方、本書のタイトルはちょっと、母親不在で頑張っている子に失礼だなぁ…と感じてしまいました。

 

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2017年2月28日 (火)

『楽しく学べる「知財」入門』

20170222_5  『女子大生マイの特許ファイル』、『すばらしき特殊特許の世界』を以前拝読しましたが、その著者であり知財啓蒙家の稲森謙太郎先生(ペンネーム)が、満を持し、本名で上梓された講談社現代新書『楽しく学べる「知財」入門』を読了(カバー画像を引用させていただきます)。
 序章を除くと全4章で構成され、第1章は著作権(66p.)、第2章は商標権(76p.)、第3章は特許・実用新案・意匠権(66p.)、第4章は知財の複合化と知財もどき(46p.)ということで、これまでのご著書が主に特許を中心に書かれていたのに対し、著作権と商標権と知財権の複合化等に多くのページが割かれていたのが特徴的でした。しかも、特許については前作や前々作の“とんでも”感を引きずって、一般読者にとっての“楽しさ”を優先している風なのに比べ、他の知財権については、面白く読ませてくれつつも、かなり考えさせられる内容で、権利処理関係の仕事に携わる方々には必読かも、と思えました。
 よくぞこれだけの分量の具体例を新書に盛り込めた!と感嘆するほど、印象的な事例が散りばめられ、毎度おなじみの、「疑問点は当事者に直接投げかけ、回答を引用する」スタイルも健在!! また、2017年1月時点で触れられる限りの最新ケースもふんだんに取り込まれています!!! さらに、通常の知財の専門書では、審査認定や審決や判決の妥当性について、あまり独自の感想等は書かれないのが常ですが、忌憚ない感想や事例の裏事情の推測に軽く触れることで、一般読者の興味喚起を促しているようにも感じられました。
 個人的に特に感じたのは、法的論点はきちんと検討されるべきであるのは当然ながら、現実の商取引や契約・権利処理では、当事者間の関係性や考え方次第で、法的にはうまく説明できない運用が数多くなされているんだ、という皮肉。私自身、過去の仕事を振り返ると、権利者にわざわざ許諾を得る必要のない件についても、後々のことを考えて、念のため“お断りを入れて”おいたことが多々あったなぁ…。
 本書の終わりの方で、徳島県にある大塚国際美術館が紹介されていますが、ここでは、世界25か国190以上の美術館が所蔵する西洋名画の複製を観ることができるそうです。ニュースで紹介されていた時も「行きたい!」と思いましたが、本書を読んでますます行きたくなりました♪
 既存の権利をできるだけ長く存続させて、活動のアドバンテージを確保することも大切な半面、一定のメリットを享受した後は、思い切って広い利用に供することも、重要な社会貢献になりうることを踏まえておかないとだなぁ~と感じます。
 書店や図書館に行くと、その膨大な文芸著作の山に眩暈がしてしまう私でしたが、本書を読んで以降は、覚醒している限り、身の回りに溢れる知財の山に眩暈がしてしまいそうになっています(泣)。
 長年の知財ウォッチの成果を余すところなくご紹介いただき、とても勉強になりました。ありがとうございました!

【法のデザイン】 次は、『法のデザイン』、行きま~す。

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2017年2月12日 (日)

『レシピ公開「伊右衛門」と絶対秘密「コカ・コーラ」、どっちが賢い?』

20170208  先日、近所の本屋さんで恩田陸さんの『蜜蜂と遠雷』を立ち読みして、買おうかどうしようか迷いながら店内をウロウロしていて、標題の本の方を衝動買いしてしまいました(苦笑)。正式タイトルは滅茶苦茶長く、『レシピ公開「伊右衛門」と絶対秘密「コカ・コーラ」、どっちが賢い?――特許・知財の最新常識』です。
 とても読みやすい文章なので、あっという間に読めてしまいますが、特許の出願・登録数に応じて糧を得ている人には、考えさせられる内容――「オープン・クローズ戦略」についてが、メイン・テーマの本でした。要するに、特許出願するということは、世間に技術内容をオープンにするということだから、何でもかんでも出願すればイイってもんじゃないよ、という話。私が気になったのは、p.164にあった記述。「経済産業省が発行した『ものづくり白書2013』では、この“オープン・クローズ戦略”が推奨されました。」という一文でした。
 私がまだ、法律なんかに縁もゆかりもなく、出版社で本作りしていた2007年頃、経済産業省から飛び出した方とたまたま話をした際、結構真剣な感じで、こんな質問をされました。
「日本の特許出願の検索サイトIPDLへのアクセスって、どこからが一番多いか知ってます?」――
 当時、IPDLのことすら知らなかった私は「さぁ?」という反応しかできなかったと思いますが、その答えは、「中国から」で、7割だったか8割だったか9割だったか、とにかく、驚くほど多かったことだけは覚えています。つまり、その頃、本書にも書かれている通り、国外の技術者たちは、日本の特許情報から多くを学んでいたのだと思われ、その事実を国も認識していたということ。で、その2007年頃から、白書が出る2013年頃までの間に、業界関係者がどれくらい“クローズにすること”を念頭に仕事していたんだろう?という素朴な疑問。p.42の出願数推移のグラフでは、2005年くらいから漸減しているから、もっと以前から対策は取られていたのかもしれませんが。。。
 その一方、p.47の月別出願件数のグラフでは、年度末に集中する道路工事数と同様、予算消化の出願が期末に集中する傾向というのはあまり改善されていないようで。。。期末になると始まる道路工事を見て、「あ~、税金の無駄遣いじゃ…?」と溜息をつく人は多いのに、合理的なスケジューリングができそうな業界でも、ついズルズル先延ばし…というのは人間のサガなのか。とはいえ、駆け込み出願に対して、綿密なオープン・クローズの検討ができるものなのかは疑問。。。(資金調達のためには特許取得は有効、という考えも…)。
 アメリカの女性弁護士さんで、レストラン経営で生活を維持しつつ、自分が注力したい案件だけを受任する人が紹介されていたことがありますが、それが出来れば理想だなぁ~…とは思いつつ、それじゃぁ実務ノウハウはあまり蓄積できないかも…とも思い、遠い目になってしまうのでした。

【全文検索サービス】 昨日、こんなニュースが! この法律が成立したら、一度この世に生まれた本の内容は、データとして末永く残れるようになる…! なんてスゴイことだろう!!confident

 

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2017年1月24日 (火)

『(く)そして生活は続く』

20170123  先週くらいだったか、毎日新聞に「星野源に屈しない」という特集記事が掲載されていました。顔とか好みじゃないのに、なぜか惹かれてしまう…という人が続出しているそうで、かくいう私も、なぜか、ちょっと陰のある不思議な雰囲気の星野源がメディアに登場すると、ついつい目が吸い寄せられているようで、「なんで?」という思いを抱えていました(笑)。彼のこと、別になんにも知らないのに…??
 ということで、彼の初めてのエッセイ集『そして生活は続く』という文庫本を読んでみました。「一体どんな文章を書く人なんだろう…?!」という素朴な興味を抱き…。

 いやぁ~、まいった。おもしろかった…。
 今やすっかり売れっ子の星野さんだけど、まだまだ駆け出しの頃の彼が、ダメダメな日常にも光を当てようともがいていた頃の、しょーもないお話しの数々。15編の「〇〇はつづく」というエッセイが収められていて、「〇〇」のところには、以下の言葉が並びます。
―― 料金支払い、生活、連載、子育て、貧乏ゆすり、箸選び、部屋探し、ビシャビシャ、ばか、はらいた、おじいちゃん、口内炎、舞台、眼鏡、ひとり ――
 これらのうち、迂闊にも私がホロリとさせられたのは、「子育て」と「おじいちゃん」と「口内炎」。
 暗めで老成していた幼き日の星野さんに、シティーボーイズライブを勧めた「ようこちゃん」、イカす。
 「たけやさおだけ星」を故郷とし、お風呂の排水口に吸い込まれそうになった「ようこちゃん」、ステキ。
 八十歳過ぎても、独立独歩で生活していた「おじいちゃん」、カッコいい。
 やっとこ完成したアルバムに、「七七日」っていうタイトルを付けた星野さん、イイネ。

 ちなみに、「逃げ恥」の平匡さんとは、当たり前ですが、別人格なので悪しからず(笑)。平匡さんよりもずっとダラしなく、Hで、本能に忠実で、コミカルに自分勝手な源さんの、洒落た感性に触れられます!

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2017年1月20日 (金)

『喧嘩の作法』

 一昨日読了した『喧嘩の作法』についてメモ書き。
 私はメーカーに勤務したことはなく、企業内知財部の実務の詳細を知りません。周囲にいる知財部勤務の知人としては、I社にいた大学の同級生、F社にいた同期友人、K社にいる親戚、K社にいる同期友人、T社にいる幼馴染のご主人、S社にいる同期友人、あとは、前事務所のお客様――。それぞれ業種は様々だし、細かい仕事の話はしないので、どのくらいエキサイティングなものなのかは、想像の域を出ませんでした。
 今回本書を読んで、グローバル企業の知財部というのは、自社を“知財”というツールを使って守る軍隊のようだな…という印象を持ちました。明細書を書く人はさしずめ、刀鍛冶のごとし。コア技術のような鋭利な刀剣もあれば、改良技術のような小刀的武器や静的なお堀…。営利を目的とする企業活動の中に身を置く限り、侵害行為の予防や、侵害者との“喧嘩”は避けては通れない仕事。。。そして、20世紀は防衛色が強かった兵法も、21世紀になると次第に世界に通用しなくなっていること。さらに、事務所では「技術」に力点を置けばある程度は事足りるものの、企業内知財部では「経営」「営業」といった観点から総合的(三位一体的)に兵法を練る必要があること。“知財”というと何となく、静かで内向きなイメージが強かったのですが、本書からは、非常に動的で外向きなイメージが浮かび上がりました。
 “兵法”という以上、キレイゴトだけでは済まない“えげつなさ”も時には必要のようですが、少なくとも、法律という枠組みの中でのフェアさを追求し、アンフェアな者には容赦なく対応して、市場の優位性確保に全力を尽くしてきた著者の姿が想像されもしました。

 知財関連書としては、かつてないほど面白く拝読した本書から、印象的な文章を抜粋。。。
「はじめに」より――
・特許は、それぞれがきわめて個性的であることが、とらえどころのなさに拍車をかける。特許の価値の不確定さは、1件の特許で世界制覇できる医薬品もあれば、数千件の特許によっても守ることのできない電気製品もある。超巨大な権利と塵のように小さな権利。それがひとつの特許制度の下で混在している。今、知財の使い方は知財の専門家だけが考えるものではなく、全社をあげて考えなければならない。なぜなら、知財は産業競争で直接使える唯一の武器だからである。
「第7章」より――
・知財制度への否定的意見は、現在とても多くなっている。
 例えば、特許制度は二次産業より三次産業のウエイトが大きくなってきている産業構造の変化に対応できていない。発明の生まれ方の変化として一個人の発明ではなく市場調査、企画、開発という組織対応で行う法人発明という概念が導入できない。企業の技術開発とビジネスに国境がないにもかかわらず、国別の制度をいまだに引きずっている。件数の急増で、特許庁の審査破綻だけではなく、各企業による第三者の特許侵害調査もできなくなってきている。特許権の極端な不安定性として登録された特許が裁判で無効になるのは40~70%であり、あらゆる権利で最も確実性がない。世界公知の調査は実際上不可能で、進歩性判断は審査官の主観でしかない。…パテントプール、大規模無償クロスライセンスという一括処理は特許をもてあましている証拠である。…時間が速い現代において18ヶ月公開されず、登録まで3年半かかり、登録後も請求範囲の変更ができ、20年間も独占させるというのは世界の時計に合っていない。
(著者は、こうしたことを現段階の限界として受容しつつ、これらの問題をひとつずつ解消していくしかない、としている)

 そして最終章の「第8章」には、協調性や平穏性を重視してきた従来の日本企業に、もっと世界の変化に敏感になり、外部情報を意識的にフィードバックできるようにならなければ…と書かれています。
 こんな風に、産業競争の最前線で戦ってきた著者ですが、おそらく根はとても平和主義なのでは、と拝察される文章もそこここに。「世界で知財の仕事をしている人たちは特殊専門分野のエキスパートとしての仲間意識がごく自然にでき、誰とでも簡単に親しくなる」とか、「知財部門では当然のように他社と情報交換をし、それにより自社のスキルアップと日本の産業全体が強くなることを意識する。それだけ勉強が楽しい仕事でもある。」とか、「私も、世界中の国に知財ワールドの親友とも呼べる人たちがたくさんいる。欧米や中国だけではなく、ロシアにもアフリカにも南米にもいる。知財の仕事をして一番良かったと思うのは、まさにこの点である。」などなど――。
 そして、私が心にとどめたいことが一つ。私がこの業界に足を踏み入れた2013年末、WIPOグリーンという、環境技術を展示する世界のデパートのような取り組みが始まったという事実。「未来の子供たちに青空を」という、半世紀ほど前に世界に発信されたホンダの思想を継承したかのようなジーンに基づいているようです。
「環境技術は1社や1国のためだけのものとケチに考えてはならない。知財を独占という機能よりも技術の普及という機能に着目して、環境技術をより広く使えるようにし、地球環境を守らなければならない。」――出版人の思想と共通するものを感じて、眼前が開けたような気持ちになって本を閉じたのでした。

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