タイムスリップ1997-13
ママのかわいい子猿ちゃん
いい男といいパパって、やっぱり違うよね?
妊娠すると、精神的にいろいろな変化がある。とにかく私のように脳天気な人間でも、かなりデリケートになる。「切迫流産」とか「ねん転」とか「奇形」とかいう言葉を聞くだけで、お腹がキュンとなり、わずかに疼いたりする。受験前の「すべる」なんて目じゃない。料理の最中、おろし金で親指をちょっと削ってしまったときも、その影響が胎児に出るのではないかと、ずっとびくびくしていた。胎教どころか、妊婦自身の心の平穏を保つのさえ、相当な苦労に思えた。
この日は出張校正で、取引先の印刷所で仕事をした私だが、さすがにお腹が目立ってきたので、担当の人に「おめでたですか?」と気付かれてしまった。いつまでも黙っていられるわけもないので素直に認めると、この人の奥さんが一昨年から大変だったそうで、妊娠して喜んでいたのも束の間、切迫流産しかかって仕事をやめた後は、ずっと寝たきりの生活だったとのこと。その間、この人がずっと家事一切をやってあげていたというのだ。自分の苦労話はそこそこに、私の身体のことをいろいろと気づかってくれ、仕事しやすい環境を整えてくれた。その人の苦労からくる、他人を思いやる一言一言がとても温かくて、苦労を知る人の深みというのをつくづく感じた。
妊娠すると、食べ物の好みも変わるけれど、「男を見る目」「いい男の判断基準」というのも変わってくるなぁと感じておかしかった。妊娠前は、我が道をゆくクールな仕事人間とか、生活力なんてなくても一芸に秀でた人とか、ちょっと家庭とは縁遠いタイプの男性を魅力的に感じたものだったが、こうなってみると、奥さんを思いやり、家族のためにはどんな犠牲も払ってくれる、愛情深い人に、軍配をあげてしまう。要するに、自分の現状に都合のいい人を感じよく思うだけだったりするのだけれど・・・(汗)。
仕事帰り、久々に友人と神保町で食事をすることにして、中華料理屋で、焼きビーフンだのカニ豆腐だのとり肉の中華味噌いためだの、食欲の欲するままに食べまくった。食べながら私は、友人の迷惑も顧みず、妊娠中の愚痴をいろいろぶちまけた。「妊娠初期はつらい割りに身体的には普通の人とあまり変わらないので、親切を受けられない」と勝手なことを言ったら、『バルーンシティの~』というファンタジーがあるよ、と教えてくれた。これは、妊婦ばかりの世界が舞台で、そこでは、お腹の小さい人がいたわられるという設定だったとか。著者はもちろん女性。同じようなことを感じてる人はたくさんいるんだろうなぁと思いつつ、それでもあまり優しくならない世間が不思議だった。やっぱり、男性にもこの経験をしてもらわなければ、社会のシステムなんて変わらないのか知らん?
遅くなっても駅まで迎えに来てくれた夫に、いつにも増して感謝の念を抱いた晩だった。
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