タイムスリップ1997-32
ママのかわいい子猿ちゃん
パパもいろいろ大変です。
正月明けのある日、街は雪に覆われていた。もうずいぶんお腹も大きくなっていたので、雪の中を仕事に出るのはかなり神経を使いそうだった。こういう日に限って、いろいろと外出の予定が入っていて、ますます気が滅入った。坂の多い駅までの道を恐る恐る歩いて行き、一度出社してから、高田馬場や早稲田に打ち合わせに出た。どの道もまだ一面雪に覆われていて、しかもそれが溶け始めているものだから、一歩一歩を薄氷を踏むような心持ちで歩かなければならなかった。
お腹が大きくなって初めて驚いたことの一つに、『歩く』という行為の普段の何気なさがあった。普通の身体であれば、歩くことに何ら注意も払わずに、ごく自然に無意識に歩いている。それが、妊娠してからというもの、一歩一歩にとても神経を使い、晴れていて道が滑るなんてこともなさそうなのに、それでも恐る恐る歩くようになったのだった。
だからこの日などはもう、ただでさえ気を使うところへ雪道ときたものだから、ダブルで神経をピリピリさせて一日中過ごした。いつものように9時半ごろ会社を出たときには、ヘロヘロに疲れ果て、家に帰り着いた途端、具合が悪くなってふとんに横になった。お腹が大きくなってからは、帰宅時間を私に合わせて駅まで車で迎えに来てくれていた夫が、私のそんな様子を見兼ねてか、「晩ごはん作るよ」と言って、そのまま私を休ませてくれた。私は、その言葉を聞いて、(神経が昂っていたせいもあるのだろうが)夫の送り迎えや家事のフォローなど、暖かさがジンっと身にしみて、ふとんの中で泣いてしまった。気弱になっているときは、特にこういうありがたさが身にしみるものらしい。その日の晩御飯で食べるはずだった肉だんごは見事に焦がされてしまったけれど・・・。
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