村上春樹『東京奇譚集』
このところ、宮部みゆきや東野圭吾にはまっていた夫が、久々に村上春樹の短編集を買ってきて読んでいた。読み終えたところで、「最初と最後の2編だけでも読んでみて」というので、昨日、移動中の電車の中で最初の一編「偶然の旅人」を読んだ。
「シンクロニシティ」について、村上春樹自身に起こった2つの偶然を紹介したあと、あるピアノ調律師の日常に実際に起こったことが、物語として語られていた。
まず嬉しかったのは、村上春樹も「シンクロニシティ」経験が豊富だと知ったこと。うちの夫などは「たまーに奇遇!ってことはあるけど、シンクロニシティ的な、意識が伝播するような経験はない」と断言するし、周囲の人に訊いても、あまりそういう体験をしている人がいないのが不思議でならなかったのだ。私には、ほぼ日常的に起こるのに。。。??? 別に、物事をオカルティックに見ているってことはないし、そもそも占いとか前世とかも信じない方だし、何についても懐疑的な私だけれど、こと「シンクロニシティ」に関しては、「意識の場ってものが、常に伝播し揺らぎ、人々の深層心理に影響を及ぼしているんじゃないか」と本気で思い始めているくらい、実体験として数々の事例に遭遇している。
ただ、以前は好きだった村上春樹の作品、久々に読んだ感想としては、“洒落すぎ”って感じがした。いわゆる格差社会の、上流の人たちのなんとなくけだるい贅沢な時間の流れを見せつけられているようで、汗とか熱い涙みたいな血潮感がない、ツルンと小奇麗なセルロイドみたいな人間がそこにいた。「人生のそこここで、感銘を受ける作品っていうのがこうも変わってくるものか」というのは、最近の実感。学生時代あれほどハマったドストエフスキーも、カッコいいと思ってみていたガンダムのシャー・アズナブルも、家庭を持ち子どもを持ってから読み返し見返してみたら、なんだかとても独善的だったり情けなく見えたりして、その自分自身の変化が、面白くもあり感慨深くもあった。今の私にフィットするのは、いったいどこの誰の作品だろう??
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コメント
ENOKIさん、コメントありがとうございます。ま・まさか、カバー絵を描かれた方ではないですよね???
投稿: TARACO | 2008年1月25日 (金) 09時04分
「東京奇譚集」を読んでいただきまして有難うございます。
私は「品川猿」が一番好きです。
表紙カバーの猿の絵も気に入ってもらえると嬉しいです。
(´・ω・`)ノENOKI
投稿: eno | 2008年1月24日 (木) 22時49分