『花はなぜ咲くの?』
昔勤めていた出版社での友人が、このほど初の単著を上梓したとのことで、一冊いただいた。化学同人という専門出版社からの本なので、やや専門家寄りなのだけれど、「花」という身近な存在についての内容でとても読みやすかった。近年発見された「フロリゲン」という植物ホルモンのことや、花の色の話、熱帯多雨林の一斉開花の話、稲の品種改良の話、昆虫と植物の共進化の話などなど、「花」についてのさまざまな研究のアプローチが紹介されていた。およそ一年がかりで仕上げたとのことだったが、ものすごく勉強して書かれているのがよくわかる。ただ、驚いたのは、遺伝子組み換え等による品種改良が、最近では日常茶飯事で、研究手法としてはごくごくスタンダードになっていることだ。環境保全の観点から、人為的に外来種が運び込まれることによる在来種の駆逐なとが問題になっているが、園芸の栽培植物や、研究の遺伝子組み換えなどと、あまり差異を感じられなかった。人間は科学の力で、次々に新しい能力をもつ生物を誕生させるが、その誕生が環境に及ぼす影響をはかるのは難しいだろう。研究開発に、倫理はいつもつきまとうけれど、その線引きはますます困難になってくるだろうことが感じられた。
「試験当日まで、残り8日」
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