日本版フェアユース規定
昨日、こんなニュースがあった(NIKKEI.NETより)。
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著作権、「公正目的」なら利用許諾不要に 知財本部が骨格
政府の知的財産戦略本部(本部長・麻生太郎首相)は、教育や研究など公正な理由があれば無許可で著作物を利用できるようにする新しい著作権制度の骨格をまとめた。IT(情報技術)の急激な進歩に対応するため、著作権者の利益を不当に害しない利用方法であれば、著作権侵害の例外にする範囲を大きく広げるのが柱。音楽や映像などのコンテンツ流通の障害を取り除き、デジタル市場の活性化や新しいビジネスを後押しする。
公正な利用法であれば著作権侵害としない考え方は「フェアユース規定」と呼ばれる。政府は29日の専門調査会に「日本版フェアユース規定」の原案を提出。文化庁での議論を経て、早ければ来年の通常国会に著作権法の改正案を提出する方針だ。
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まさに今の私の関心事に対応したニュースだ。実は、個人的にもこのフェアユース規定は気になっている。息子の通う学習塾が昨年、(社)日本文藝家協会と日本ビジュアル著作権協会から著作権侵害で提訴された。塾の教材には、膨大な文章やイラストが(おそらく学校の教科書よりもずっと多く)採用されている。塾は、教育産業とはいえ営利目的で運営されているから、こうした採用に際し、許諾を得、場合によっては使用料を支払う義務があると思われるが、その一部を怠っていたらしい。しかし親の立場から考えると、子どもの教育のための資料に、法外な使用料を課せられ、それが巡り巡って親の教育費負担となるのは重荷である。だから、このフェアユースの範囲に、営利目的の教育産業活動がどう組み込まれるのかは興味深い。こうした著作権クリアのための許諾作業というのが、いかに煩雑で面倒なことかは、自身の編集者仕事で身に沁みているだけに、教育に携わる人には、できるだけそんな雑事に忙殺されず、教育に専念してほしいと思ってしまう(もちろん、原著作者の方々への報告義務や権利使用の対価は可能な限りあって然るべきだと思うので、対応度合いの判断は難しいと思う)。現実世界の運用さえややこしいのだから、ネット上のフェアユース議論はさぞかし喧々諤々なことだろうな。
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