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2008年11月23日 (日)

『CODE ver2.0』

V2code  とても難しい本だったので、ずいぶんと時間がかかってしまったが、ようやく読み終えた『CODE version2.0』。感想自体もひどく堅苦しい書きっぷりになってしまうけれど、せっかく読破したのだから、書くだけは書いておこう。。。
 突貫工事で作られたんだなぁ、とタイトな制作期間が気の毒に感じられる本書。かなりの数の校正漏れがあるが、興味深い内容がそれを補って余りある!
 法律の門外漢である私だが、法を“作り出す”ことは、数学の公理を“見つけ出す”よりももしかしたら厄介な仕事かも、と思わされるほど、“規制”をめぐる根本的な議論がなされた本だった。レッシグ氏の言う4つの規制――“法”“規範”“市場”“アーキテクチャ(コード)”――アメリカの憲法起草者たちの並々ならぬ公正さと想像力をもってしても、現代のこの4つの“規制”力の変化は予期できるものではなかったらしい。確かに今、サイバー空間を含めた世界の在り方を見据え、社会のさまざまな規制を“翻訳”し直す時期かもしれない。著作権を含む知的財産権、プライバシー、言論の自由――これらが皆、ネットというグロ-バルメディアの力で在り方を変えている。これからの世代が、この変化に対応する翻訳を選択していかなければならない。
 レッシグ氏は言う。サイバー空間にいるとき、人はいつも実空間にもいる。法にとっての今後の問題は、規範が適用される人物が同時に二ヵ所にいるとき、両方のコミュニティの規範をどう適用するかを考えることだと。なんだか量子力学っぽい。量子力学では、“光は粒子でもあり、波でもある”という風に受け入れているけれど、現実世界でのこの「再審理主義」のような類は、“どっちつかず”の価値観としてなかなか受け入れられない。言語的な孤島に住む日本人には実感が薄いが、フランスでは非合法なナチスグッズをヤフオクで競り落とすフランス人や、アメリカでは非合法なテレビ番組のストリーミングサービスを提供するカナダのiCreativeTVの例を見れば、この難しさは一目瞭然。これまであった国際法の組織間紛争の観点では解決できない個人レベルでの主権争い。
 また、サイバー空間に限らず、現代は規制構造をあれこれいじる力がかつてないほど高まった時代に突入しつつあるという。にもかかわらず、多くのリバータリアンは“傍観する”“何もしない”道を選びがちだと。レッシグ氏は夢想する。真に民主主義がうまく機能すれば、理性が理性を導けるはずだと。
 上記の主権争いや、今後巻き起こるであろうサイバー空間をめぐる各種係争についての具体的な解決策は何も示されていないが、それらの問題の土俵と、語るべきポイントの枠組みのようなものを、随所で与えられた本だった。「規制」とか「民主主義」ってものを、もっと真面目に考えなくちゃな、と思わされた。

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