『彼女について』
夫が珍しく吉本ばななさんの本を買ってきたので、私も拝借して読んだ。前半半分くらいまでは「どうしてこんな悲しい話を書くの~??」と思いながら読んでいたけれど、後半は離すに離せずに一気読み。彼女の本は『キッチン』以来かもしれないのだが、切なくて気味悪いながらも、不思議な読後感。死後の魂の漂いとか、魔性の取扱いとか、成仏することとか、そんなオドロオドロしい非日常的な世界を前に、現実を淡々と丁寧に生き、何かを大切にしながら慈しみ続けることの幸福感が強調され、人の弱さとか強さとか混沌とした内面に対峙させられる感覚。最近こういう小説は読んでなかったなぁ。揺れる青春時代なら、もっと感じるところがあるのだろうけれど、現実どっぷりの今、吉本ばななさんの物語は私には幻想的に過ぎる。むしろ「こんな話をよくここまでキレイに書けたな」というのが率直なところだ。きっと、世の中をとても優しい眼差しで見つめている人なんだろう。批判とか非難ばかりが頭をもたげがちな最近の自分を反省させられもする。
おいしい珈琲が飲みたくなった。
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