「意匠法」1~4 所感
意匠法の講義は私の楽しみの一つだった。というのも、以前インダストリアルデザイナーの川崎和男先生の本を作らせていただいた際、「デザインの力ってスゴイなぁ」と漠然と思っていたからだ。川崎先生は福井県武生のご出身で、メガネフレームやナイフ・包丁やテレビから車椅子・人工心臓のデザインまで、数々の仕事をされているが、それらデザインの陰にはいつも、明確な目的が隠れているように思えて感動したのだ。メガネフレームなら“耳に負担をかけず尚且つしなやか”とか、包丁なら“刃と柄を一体化した衛生的なもの”とか、車椅子なら“乗ってカッコよく軽くて機能的”とか、人工心臓なら“身体の中に入れるのに抵抗ない自然の美しさ”とか、、、人が喜ぶ美しいもの―――それが意匠なんだと思った。
ところが、法学の世界では意匠法はかなりマイナーで、専門家はほとんどいないとのこと。審査も論理性よりはかなり観念的な部類に属しているそうなのだ。もちろん、物品の形状や色彩・模様等を判定するわけだから、“奇抜さ”や“斬新さ”といった美的印象は審査されてしかるべきだけれど、私としてはもう一条件、“意匠たらしめる”思想があるものだと思っていたわけだ。まぁ、そこまでのものを求めては、創作の奨励とか産業の発達には貢献しづらくなってしまうということなのだろう。
学説もまだ錯綜状態で、特許庁系の“創作説”や裁判所系の“物品混同説(競業説)”、それらの中庸をとる“需要説”など、何を中心に意匠を論じるべきかも立場によって意見が分かれている。どの説をとっても現実はなかなかうまく説明つかないようだ。私としては、あくまで思想を伴った“創作性”ありきで、需要や混同は後からついてくるもの、という見方をし、さらに色彩や模様については形態の付属物として類似の範囲に入れてしまえばいいのに……と思ってしまった。
ここまで学習してきて、とにかく厄介に思えるのは時系列の変遷に伴う手続の分岐。これって、実務上はどういう風に管理しているんだろう?? 単純作業の大筋くらいはプログラムで処理管理できそうだけれど、細かいケースバイケースの事例対応に突入した場合、一人で何件も抱えていたりしたらパニックになりそう。。。短答式試験とはまさに、このパニックになりそうな状況の紙上体験といった趣だ。3時間半で60問(5択)に回答するわけだが、実質210分で300ケース、すなわち1ケース42秒で事例検討するということ。どひゃひゃひゃひゃ~! これが完璧に処理できるようになったら、コンピュータ並みかそれ以上だな。
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