ポアンカレ予想
録画してあったNHKドラマ「Q.E.D 証明終了」を息子と観た。最近気に入っているコメディタッチの推理ドラマだ。今回のタイトルは“エレファント”。数学の世界では、簡潔明解な証明は“エレガント”と讃えるが、駄証明については“エレファント”と揶揄するところからきている。今回は“ポアンカレ予想”にまつわるドラマで、作中では特に深くこの伝説的数学問題に触れたわけではなかったのだが、以前Wikipediaか何かに、少しはわかりやすく解説が書いてあったな、と思ってネット検索したら、YouTubeに「フィールズ賞を辞退した天才」というNHKのドキュメンタリーがアップされていた。受信料払ってるからいいよね、と言い訳しつつ、これまた息子と一緒にその映像も観た。驚いたことに、トポロジーについて説明する部分でコーヒーカップがドーナツに変わっていくCGが挿入されているのだが、それが2番組間で使い回されていた。「へ~、NHKってこんな使い回し、OKなんだぁ」……
ロシア人数学者グレゴリー・ペレルマンは、2006年、ポアンカレ予想の証明に成功した業績を讃えられフィールズ賞を授賞されたが、なんとそれを辞退して姿を消してしまった変わり者として伝えられている。――― それにしても、この超難問を解決したペレルマンの、40歳にして澄み切った瞳にすっかり魅了された。番組は、世間との交渉を断ってしまった彼に対して「彼は、宇宙の深遠に係わる難問を解くという栄誉を手にしたかわりに、何か大事なものを失ってしまったようだ」とまとめていたが、私は特にそんな印象は受けなかった。次なる問題を手にして夢中になっている人なんだから、もっと静かにしておいてあげればいいのに…という気持ち。それよりも、トポロジー的に解決されたものとばかり思い込んでいたところ、むしろ微分幾何学的手法に加え、エネルギーやら熱量やらという物理的手法まで駆使して解かれた、という解説にビックリ仰天だった。息子はまだ、抽象的な概念は理解できないようで、“宇宙に向けて一本の紐を飛ばす”という思考実験のCGを見て「あれじゃぁ星にぶつかっちゃうよねぇ。。」とブツブツ言っていた。
登山家のジョージ・マロリーは「なぜエベレストを目指すのか?」と尋ねられ「そこに山があるから」と応えた。元財務・金融相の中川昭一氏は「なぜ飲んだのか?」と尋ねられ「そこにグラスがあったから」と応えた(苦笑)。ペレルマンもきっと、「そこに未証明の問題があるから」ということで、命ある限り、目の前の問題を考え続けるだけのことなんだろう。人間って、ホントに面白い。
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コメント
そうですね、今は“歓喜の中の失踪”だと思えるからいいけれど、“悲嘆の末の失踪”にはならないで欲しいですよね。
投稿: Taraco | 2009年2月23日 (月) 01時22分
>ペレルマンもきっと、「そこに未証明の問題があるから」ということで、
>命ある限り、目の前の問題を考え続けるだけのことなんだろう。
更に、彼にはそれが他人が解いていようがいまいが、関係ないのかも。
自分で理解できなければ満足できないんだろうなぁ。
でも、数学にはゲーデルの不完全性定理もあるから、どこかで終わりのない道に踏み込んでないと良いけど...。
投稿: Y.Mita | 2009年2月22日 (日) 13時39分