「条約」1~2所感
入門講座もゴール目前、産業財産権四法に続き条約の講義が終わった。“終わった”とはいえ、条約には「パリ条約」「PCT」「TRIPS協定」「マドリッド協定議定書」等、膨大な範囲がある。講義で触れたのはこのうちの最初の2つの一端のみで、残りはテキストを自習して演習に臨んだ形。自習になるとえらく時間がかかる割に、ほとんど身につかない。
条約なんて、普通の人は滅多に目にすることはないと思うが、私は過去に一度、「生物多様性条約」というのを読んだことがある。これは1992年に作られた条約だが、かなり直訳っぽくて、内容的にも怪しく、こなれていない印象が否めなかった。それに引き換え知的財産権がらみの条約類は比較的発祥が古いためか、そういう急場しのぎ的な不自然さはあまり感じなかった。しかし条約というのは、その当時の国力や交渉人の押しの強さなども如実に反映するのか、最も驚いたのは、マドリッド協定議定書の採択当時許されていた使用言語がフランス語のみ、ということだった。今現在も世界のあちこちでいろいろな条約が交渉段階にあるのだろうけれど、それこそ白洲次郎のような“従順ならざる日本人”が強く自国の主張を述べてくれていることを願うばかり。不思議なのは、これだけ海外依存の高い日本なのに、どうも海外との政府レベルの交流というのがあまり感じられないこと。まぁ一市民がそんな交流の度合いを体感できるものでもないだろうが、国際交渉シーンでどうも蚊帳の外にいる感じがするのは私だけだろうか?
パリ条約が各国の刷り合わせ的意味合いを強く持つのに対し、PCTやマドリッド協定議定書はグローバリズムの観点から人的資源の集中を有効に行う試金石として、ずいぶん機能的になりつつあるんだな、という印象。それでもやはり、国際間の言葉の問題と属地主義というのが大きな壁となっているのは否めない。
かわいいな、と思ったのは“テルケル(telle quelle)マーク”という言葉のフレーズ。なんだか“てるてるぼうず”みたい。パリ条約締結当時のロシア商標法では、ロシア文字で表された標章でなければ登録できないことになっていたのだが、そういう国においても“MacDonald”は“MacDonald”のまま“そのまま(テルケル)”登録できるようにする、という主旨だ。日本では、“英語そのまま”の形態の商標の方が人気が高まるような気がするが(アルファベット以外の文字は難しいか?)、中国では、むしろ中国語に翻案した方が受け入れられやすいと、何かの番組で紹介していた。これも国民性かなぁ~と思う。
それにつけても、PCTでの国際調査機関とか国際予備審査機関の仕事は半端でなく大変に思われるが、いったいどんな人がそこで働いているんだろう?! また、権利消尽と輸出入の問題は難しいと思うが、アイディアの発案への敬意を考えたら、非権利者による無断の輸出入行為は当然侵害行為ではないかと感じてしまった。
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