『津波 ~アンダマンの涙』
タイ在住のデザイナーさんからメールをいただいた。以前、彼から紹介してもらって2004年12月のタイの津波に関する本を企画したことがあったのだが、会社の方針に合わずに断念したのだけれど、このたび(株)めこんという出版社から無事刊行される運びとなったというご連絡だった。とても切実な内容のお原稿だったので、書籍として世に出ることになって本当によかったぁ~と思うと同時に、フットワークの軽い出版社の姿勢をうらやましく感じた。
過日の「エルサレム賞」授賞式での村上春樹さんの講演内容を、毎日新聞紙上で佐藤由紀さんの翻訳で読んだけれど、“卵と壁”の相似形は世の中の至るところに転がってるなぁ…と実感する。私が転職した当時の出版社は、とても弱小な分フットワークも軽く、採算度外視企画にも賭けてみられる冒険心があった。それが次第に大きくなって、実績保証を優先するようになると、マジョリティに売れる企画しか通らないようになってくる。あたかも卵たる個人が壁たる体制側に取り込まれていくように、内部にいると、体制の論理が致し方なく思えてくる。
先日のニュースで、小さな製薬会社が、数少ない白血病患者のための薬を開発して実績をあげてきていると紹介していたけれど、大手製薬メーカーでは手が出せないニーズの少ない薬でも、「必要としている人がいるのだから意味があるし、まさにニッチな市場に参入できることこそ我々の強み」と言っていた社長さんの言葉が力強かった。
出版社も、小さいところの方が面白い本を作れるのかもしれないな、と今だから思う。『津波 ~アンダマンの涙』、機会を見つけて拝読させていただきたいです。
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