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2009年6月27日 (土)

映画「剱岳 ~点の記」

Tsurugi20090626  奥穂、槍、北岳など、思い出深い山はいろいろあるが、剱には未だ登ったことがない。今でこそロープーウェイや鎖場を駆使して誰でも登れるようになってはいるが、厳しい山であることに変わりない。北アルプスの北の北、日本地図の山岳測量 最後の空白地帯だったのだそうな。新田次郎さんの小説を、木村大作さんが映画化。妥協のない過酷な撮影だったと聞き、期待を胸に映画館に向かった。
 伊能忠敬には感服するし、GoogleStreetViewも野心的な試みだと思うけれど、山岳測量隊の、高度と大自然に挑む道なき道を行く大仕事は、地味ながらも熾烈で誇り高いものだった。そしてなんといっても、宇治長次郎という案内人と柴崎芳太郎という測量手の二人の人間性が素晴らしい。実直とか誠実とか、そんな言葉では表せない魅力。これが、山と対峙してきたことで培われたものなのか、生来のものなのかはわからない。けれど、ありのままの自然を相手にすることで、無駄のない、嘘偽りのない強さと優しさを身につけたんだろうと思われた。舞台である山の雄大さは言うに及ばず、雲海に沈む夕陽や、雷鳥やカモシカ、雪渓や岩肌……自然が見せるいろいろな顔を捉えたカメラワークも、まさに登山者の眼のようだった。
 「人は何を成したかではなく、何のために成したかが大事」という役所広司さんの声が胸に沁み、一枚の地図にたくさんの無名の人を思うようになるであろう自分がいた。

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