千代田区立九段中等教育学校説明会
月曜朝、新聞を取りに玄関先に出たら、自転車のハンドルに一匹のトンボが留まっていた。小学校のプール開き前、「ヤゴ救出大作戦」と称して、プールに産み落とされて育っていたヤゴを子どもたちが救出し、教室で飼っていたのだが、その中の一匹が遊びに来たのかな? 朝の涼しい風に揺られながら、小一時間ほども同じ場所に居座っていたので、家族でトンボ観賞という週明けとなった。
その後の午前中は九段中学の学校説明会へ。説明会会場は別の所だったが、学校自体は九段下徒歩2分という好立地。近くには息子の大好きな科学技術館もあり、靖国神社の隣ということもあって杜に囲まれた環境。この学校は、平成16年頃に全国で初めて設立された区立の中高一貫校。以前読んだ『塾不要 親子で挑んだ公立中高一貫校受験』という本で詳しく紹介されており、未だ卒業生を出していないため進学実績はない。
校長の高木 克先生が、教育方針や経営方針を説明されたのだが、これがとてもいい意味で公務員らしい実直な雰囲気のものだった。以下、箇条書きにて印象深い項目を列挙しておくが、昨今の学習指導要領やゆとり教育への危機感をひしひしと体感した上での現場からの公教育改革実践者という趣だった。
・平成22年から改修工事を始め、24年に完成予定
・生活体験やお手伝い経験が、子どもの道徳観・正義感と強い相関を持つ
・昨今の学力低下と規範意識の低下に危機感を覚える
・校外学習時間も二極化の一途で、学力格差を実感する
・特に下位層の肥大化が現場の実感であり、家庭の教育力が低下している
・経済的余裕がなくても質の高い教育が受けられる公教育を実践したい
・「確かな学力の定着」「豊かな人間性の育成」が経営目標
・「九段メソッド」と命名した独自の取り組みがある
(江戸っ子塾・奉仕学習・キャリア教育・環境教育等)
・区内11大学・40超の民間企業・各国大使館と連携している
・8:00登校
・先進的な英語教育ばかりがマスコミでクローズアップされるが、
理数教育もきわめて充実していることをアピールしたい
・勉強ができるだけの生徒は育てたくない――「学びが人を自由にする」
(思わず“ハリポタ賢者の石”のハーマイオニの言葉を思い出した……)
……などなどなど。確かに、学費は私立と一桁違って格安な割りに、施設もカリキュラムも充実している。予算規模も通常の都立校の10倍ほどあり、教員数も1.5倍。かなり魅力的な学校である。
ただ、その後の副校長先生による「学習」「生活」「入試」についての説明を伺ったら、少し腰が引けた。まず、まぁ当然なのかもしれないが、学業面はかなりハードらしく、家庭学習3時間以上の確保は必要とのこと。授業で大方マスターする主義の我が家にはちょっと難儀。生活面では、前期3年は給食で後期3年はお弁当とか、中学3年でも部活の引退はないなど、公立一貫校の良さも感じた。問題は「入試」で、テストは「適性検査1」「適性検査2」という教科横断型の2つの試験をそれぞれ60分ずつ。これらの問題は中学受験の問題とは様相を異にし、家庭科・音楽・図工などの要素も相当量入るらしい。しかも、募集人数が「区分A」「区分B」と分かれて、「区分A」は千代田区民で倍率1~2、「区分B」は都民で倍率9~13。つまり千代田区外の男子の場合、約10倍の倍率をくぐり抜けて40名ほどが選抜されるということだ。試験内容も予想がつかないとなると、かなり博打的な様相。惚れこんで一本に絞るには、ちょっとリスクが高い感じがした。千代田区民には最高の学校と言えるだろう。
それにつけても、現在の学習指導要領はやはり恐ろしい。私が子どもの頃には“スタンダード”を示していたらしいが、今では“ミニマム”な内容を、順序まで指示して先生方を拘束する。おかげで“落ちこぼれ”と呼ばれるような子どもはいなくなったらしいが、それに輪をかけて学力格差が広がった上、平均はむしろ下がってしまっているようだし。小→中→高→大→社会人と、教育に携わるすべての人が危機感を抱いているなんて異常ではなかろうか。九段中では、義務教育で禁止されている土曜授業の時間を確保すべく、予備校の先生の協力を得て4時間の「土曜予備校講座」なるものを開講して補っているとか。週休2日に慣れきった息子は、中学からは土曜も授業があることにウンザリしているようだが、言われてみると、親の方もそのペースにすっかり慣れてしまっているなぁ。私の子ども時代って、実はハードだったのか??!
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