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2009年9月19日 (土)

『新参者』

Newface20090918  いやはやお恥ずかしい。金曜日、10時きっかりにブックスPISMOという本屋さんに駆けつけ、東野圭吾さんの新刊『新参者』をいの一番に買い、その日のうちに読みきったのだけれど、この作品、2004年8月から「小説現代」でスローペースで書きためられたものだった。しかも、私がタイトルの『新参者』から予想した“人と人との心のすれ違い”を描いたものどころか、180度正反対の“人と人との心のつながり”が描かれていて舌を巻いた。ネタバレしてはいけないので詳しいことは書けないが、読後感はスッキリと気持ちよい上、人形町という街を知る人にはひときわ楽しいと思う。以前から、散歩しているとフツフツといろいろな物語が湧き出てくる街だと思ってはいたが、明日からはきっと、加賀刑事の眼で眺めなおすことだろう。
 つまらないことだが一箇所だけ、第一章に書かれていた“甘酒横丁の先は都営浅草線の人形町駅”という部分は、“営団日比谷線の人形町駅”の間違いなのだけれど、担当編集者さんが裏取りし損ねたか? 編集者の大事な仕事の一つに“裏取り”がある。著者の書いた内容に間違いがないかを調べる作業だ。もちろん全部が全部調べきれるはずもなく、いつでも漏れの出るものだし、そもそもフィクションたる小説で裏取り作業がどのくらい必要かは不明なのだが、これはある意味、刑事さんの仕事に似ていなくもない。一見本筋には関係なさそうなつまらないことでも、きちんと裏取りされた本というのは信頼性がグンと増すものだ。本書全九章のうち、七章ほどは本筋とはあまり係わりないことなのだが、そんな些細な糸も細かく解きほぐしていった加賀刑事の丁寧な仕事が、作品の最大の面白みになっている。
 腰巻裏面に「こんなことが出来ればと思った。でも出来るとは思わなかった」という東野さんの言葉があったが、私自身「こんな作品も出来るんだぁ!」と新鮮なオムニバス形式に感嘆したのだった。それにつけても、シュリンクを解かれたばかりの新刊本の紙とインクの匂いは、何度嗅いでもいいもんだなぁ~♪

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