フォントは「商品」たり得るか?
現状、どういう判断が最新の潮流なのか知らないが、“フォント”の保護についての問題が、ずっと私の中で引っかかっている。出版社や印刷会社の立場では、大きな声では言えないが、良質の安いフォントが大量に出回ってくれた方がありがたいことはありがたい。一方、一度でも自分でフォントを作ってみようとしたことのある人ならわかると思うが、その作業はかなり大変なことで、明らかに“商品開発”に当たるだろう。
フォントが、意匠として保護されないのは致し方ないような気もする。著作権法での保護が微妙なのもわかる気はする。が、不正競争防止法で「商品」に当たらない、とされてしまうのは、どうにも納得いかない。どう考えたって「商品」ではなかろうか??? 欧米諸国でのタイプフェイスの法的保護はどうなっているんだろう? カリグラフィぐらい美的なものになると別扱いなのだろうけれど…?
これに関連して、大和印刷の「100円で書籍1冊PDF化サービス」なんかも気になるが、そもそも、米国発の書籍電子化の潮流の中では、フォントの存在感は薄れゆく運命なのだろうか…?
平成17年の不競法2条1項3号の問題では、「アイコンやフォントなどの無体物は商品形態には含まれない」となっている。音楽やら動画やらプログラムやら、いろいろ無体化している中で、有体/無体の線引きがよくわからない。「アイディアを形に」…ってよく聞くフレーズだけれど、もともとは無体物であるIPを保護するための知的財産権法で、どの程度“有体性”に重きを置くべきなのか、頭がこんがらがってしまうのである(汗)。
短答過去問も3周完了。予備校から追加送付された平成21年改正の講義を久々に聴いて、残すところ1ヶ月余り。あー、光陰矢のごとし。
【追記】不競法におけるタイプフェイス事案について読者の方からご指摘いただきました。これには、東京高判昭57.4.28の商品たり得ない、というものと、東京高判平5.12.24の商品たり得る、というものとがあり、未だ一義的に解釈できない状態です。ブログ中、あたかも「商品たり得ない」と結論が出ているかのような書きぶりになっておりましたこと、謹んでお詫び申し上げます。ご指摘ありがとうございました。
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コメント
イトウさま
素早いご指摘、ありがとうございます。
試験直前なので助かります。。。というか、
試験直前でこのあやふやさが大いに不安ですが(^^;;;
最高裁で結論が出ていない問題は、まだ白黒つけがたい
状態ですね。短アドの読み込みがまったくできていない
ので、時間の許す限りやってみたいと思います。
ありがとうございました。
投稿: Taraco | 2010年4月21日 (水) 08時50分
文章に違和感を感じましたのでコメントします。
文字は商品等表示にあたる可能性がありますので、2条1項1号もしくは2号に
該当する可能性がありますよ。
モリサワ・タイプフェイス事件が短答アドバンステキストに載っています。
ご確認下さい。
過去問では3号の商品形態に該当しないため、×となっているだけで
不正競争防止法で保護されないわけではないです。
ただし、特異な文字が保護される可能性があるだけで、絶対ではないので
ご注意を。
もう少し短アドを読み込まれることをお薦めします。
今私も必死に読んでいますが(苦笑)
投稿: イトウ | 2010年4月21日 (水) 08時30分