« インフルエンザ予防接種 | トップページ | ああ、諭吉さまぁぁ~… »

2010年10月27日 (水)

『特許法』読了

20101026  昨日、中山先生の『特許法』をようやく読み終えた。メモを取りながらチビチビと読み進めていたため、感想やら何やらいろいろ膨大にあるのだが、備忘録的に主要なものだけ記しておこう。
 とにもかくにも、「法律の専門書の名著とはこういうものか」と納得しつつ、その読みやすさや、著者の平衡感覚の素晴らしさに感銘を受けたというのが正直な感想。脚注の一部にこんな記述があった。「法律というものは周知徹底させることに意味があるという原点に立ち返るべきであろう」――― これは、様々な分野にも言えることだと思ったし、クレームをわざと難解に書くというトレンドもあるようだけれど、これこそまさに、“公示”という趣旨に反する悪習ではないかと感じた。

○ データベース保護は投下資本の保護を旨とするとのことだが、それならば、有名人住所録の再利用という、短答頻出の著作権問題についても、保護されてしかるべきでは…と感じた。
○ ドイツの特許制度が、最初は産業政策目的を主眼としていたのに、『我が闘争』の頃から発明者重視に転換したとのことで、引用文が紹介されていたが、これがしごくまともな内容で驚いた。ゴーストライターがいたのでは…?と思わされた。
○ “冒認”という私の嫌いな言葉の由来が紹介されていた。中国の明律に現れた用語で、“横領”を差すとのこと。
○ 職務発明の問題は、特許法・労働法・契約法にまたがる問題だとのこと。
○ amazonで本書について揶揄されていた「生ごみ処理装置事件」の記述だが、ちゃんとp.167に記述されている。
○ 早期審査対象に「グリーン関連出願」というものもあるらしい。この手の分野に注力できたらいいなぁ。というか、今後の出願にはあまねく「グリーン関連」に関する記述が入るべきではないかと思う。
○ コモンズへの言及が各所にあり、中山先生のスタンスに好感を持つ。
○ 中山先生は、特許権を報酬請求権のみにしてもいいと考えておられる部分もあるようで、私もあまり独占排他権を強化すべきではないような気がする。
○ 「情報化社会における法のパラダイム変換をも視野に入れた広大な問題」が横たわっているとの指摘。
○ クロスライセンス以外の裁定は未だ一件もなされていない模様。

 いずれにせよ、予備校のテキストでは感じられないような、法律のダイナミズムを実感した…というと大げさかもしれないが、「こんなにもまだまだ検討の余地があるんだぁ~!」と驚かされた。理系の名著では考えられないような、課題山積状態。ビジネスの国際化とインターネットをはじめとする情報技術の進展で、法律の世界も相当揺さぶられているんだろうなぁ。初学者の私などには到底計り知れない価値ある本なのだと思うけれど、このタイミングで一度読破しておけてよかったと思う。

|

« インフルエンザ予防接種 | トップページ | ああ、諭吉さまぁぁ~… »

学問・資格」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« インフルエンザ予防接種 | トップページ | ああ、諭吉さまぁぁ~… »