『<反>知的独占』
今月末、また気になる本が出るらしい。『<反>知的独占――特許と著作権の経済学』という本。経済学者の視点というところがちょっと興ざめではあるのだけれど、コモンズと非コモンズの線引きに関心を寄せる者としてはやはり考えさせられる。
先日のノーベル化学賞の嬉しいニュースは、マスコミ各社があれこれと報道していたけれど、日経の「鈴木先生は特許を取らなかった(取る余裕がなかった)」という切り口も面白かった。もし、取る余裕があったとしても、研究者としては、特許を取るよりもむしろ、幅広く研究の輪が広がることの方が研究者冥利に尽きるのかもしれず、企業の研究者とは考え方も姿勢も異なるのかもしれない。
昨日の「日刊知財」の中には、“料理に著作権がない幸せ”という『日経レストラン』編集長のコラムも紹介されていて、料理のバラエティの豊かさと、落語の広がりの豊かさとを並べて論じていた。(特許に関しては、昭和50年改正で、医薬と飲食物が不特許事由から外されたと教科書にはあったが、飲食物の特許って何件くらいあるんだろう?) 確かに、独占の枠外に置かれた“いい”ものというのは、市民生活の日常に自然と浸透して、自由に発展していくものなんだろうな。
「独占すべきものとすべきでないもの」を考えたり、「独占することのメリットとデメリット」を考えたり、ということは、一部の恵まれた人の特権なのかなぁ…とも思えるけれど、線引き次第で世間の様相がガラリと変わっちゃう分野っていうのもありそうだな…。
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