『下町ロケット』
直木賞作品を買いに、発表日翌日に書店に走るなんて、何年ぶりだろう…? 天から「読むべし!」という声が聞こえた気がして、金曜の10時に近所の書店に走ったら、書店員さんがニコニコ笑って「一冊だけ在庫ありますよ」と持ってきてくれた。そして一気に読破。爽快!
やっぱり人間、自分の腕っぷし一本にプライドを持って仕事しなくちゃな~、と思わされた。前半分は、特許の“技術的範囲”と“優先権主張”の大切さを目の当たりにさせられる展開。後ろ半分は、日々生き馬の目を抜くような仕事ぶりの人なら、時に酸っぱいものが込み上げてしまうくらい、胃の痛くなるような事態の連続。女性の登場人物があまりに限られていて、ちょっと愕然とさせられてしまったが、技術畑って今でもこんなものなんだろうか…。中小企業の現実は、もっともっと厳しいものかもしれないけれど、“若い会社ってやっぱりいいなぁ”と思いながら読んだ。“ボロは着てても心は錦”なんて言ってしまうと古臭いが、そんな矜持をしみじみと思い出さされる作品だった。
裁判なんて所詮、資金力と時間に余裕のある者に有利な不条理なステージだ…と暗澹とした気持ちにさせられることも多い中、神谷弁護士や田端裁判官のような人もいるんだよなぁ。(神谷弁護士、出番は少ないながらも、この物語のある意味でのキーパーソンであり救世主!)
1つだけ言うなら、主人公の佃社長の商談口調は「です、ます調」にして欲しかったな~ということ。大切な商談で、その横柄な口調はないだろ~、とついついツッコミを入れてしまった。とはいえ、読後感スッキリの爽やかな佳品。佃製作所のこれからこそが正念場かもしれないけれど、それはそのまま、読者へのエールかな。。。
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