ちっちゃなハエトリグサ
去年はオタマジャクシの観察を楽しんだ気がするが、今年はハエトリグサの観察を楽しんでいる。夏の箱根旅行で食虫植物の解説を聴いてから買った一鉢の小さなハエトリグサ。リビングの窓辺に置いて、朝夕水やりしているだけだけれど、その成長ぶりが楽しい。
生まれたばかりの小さな葉には、まつげのような細いトゲはまったく付いていない。それが、大きくなるにつれてちっちゃなトゲが生えてきて、それがだんだんと伸びてくる。大きくなると、葉の幅とトゲの幅が同じくらいにまでなって、妖艶な美女のeyelashのよう。そしてこのトゲ、虫を捕まえたときには一本一本が見事に交互に組み合わさって、キリスト教の祈りのポーズのようになる。
不思議なのは、左右の葉の内側に点在する“感覚毛”。6~8本ほどの目に見えないくらいの細い毛が葉の内側に生えており、その毛に「2度」、「物体」が触れると葉が閉じるのだ。水が2度触れても閉じないのに、固体が2度触れると閉じる。雨粒が当たるたびに閉じていては疲れてしまうのだろうし、1度何かが当たっただけで閉じていても疲れてしまう。“動く固体”が“2度”触れることで閉じるという、この生命の神秘! ハエトリグサ君が数をカウントしているようで、なんだか畏敬の念が起こる(笑)。本来は、電気信号のようなもので刺激が伝わっているのだそうだが、それにしても“2度”の電気信号で収縮する仕組みって、どうなっているんだろう?
ウツボカズラのような壺式の食虫植物の中には、ネズミなどの大きな哺乳類を捕獲するものもあるという。SF映画に出てくる巨大なヒト喰い草を連想してちょっと怖い。我が家のハエトリグサ君も、買ってきたときに閉じていた葉が、しばらくして開いてみると、中にはハエの死骸が残っていた。エキスだけ吸い取られた残りカスだ。こうしたカスが、雨に流されると、スベリ台状の葉をつたって、株の根元に落ちてゆくところがまたスゴイ。細く短い根という短所を軽妙に補って、光合成以外の方法でも効率的に栄養を獲得する仕組みが備わっていて、健気な働き者に見える。
9月1日ロードショーの映画「ライフ ――いのちをつなぐ物語」の予告映像にも、チラリとハエトリグサが登場する。どんな小さな命も、気長に眺めていると本当にいろんなことに驚かされるものだな~。
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