円城塔氏と人生の岐路
遅ればせながら、今年の芥川賞について。石原都知事との悶着などから、すっかり田中氏ばかりがクローズアップされた感があるけれど、作品からでなく、生き様から人生を考えさせられたのは、円城氏から。
円城氏の作品(?)をたった一つ読んだ。それは夫に教えてもらった2008年発行の物理学会誌vol63に寄稿された「ポスドクからポストポスドクへ」という小文。
円城氏は、非線形物理学の研究で学位を得て、34歳の春まで、学究の徒として任期付のポスドク生活を送っていたそうだが、ついにエンジニアとして就職する道へ転身するとともに、文筆業と二足の草鞋で生きていくことにしたのだとか。その転身から間もなく、『オブ・ザ・ベースボール』という作品で、第104回文學界新人賞を受賞。学会誌への寄稿は、その受賞を契機として、当時のポスドク問題へ一家言投じてもらおうと、編集委員の方が執筆依頼したものと思われる。
こんな執筆依頼をした学会誌を面白いと感じつつ、依頼に応じた円城さんの文章もまた、ウィットに富んで面白かった。実際問題は、とても辛く長いポスドク生活だったろうし、風通しの悪い学術界に文句たらたらだったのだと思うが、それをサラリと皮肉って“オサラバッ!”という感じの潔さは、なんだかスッキリ感じられた。
こんな小文から人生の岐路について考えさせられるとは思ってもみなかった(笑)。何か一作、ちゃんとした彼の作品を読んでみようかな?
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コメント
藍花さま、コメントありがとうございます。
芥川賞受賞者に“黒い粉”が送りつけられるという
事件もあったようですが、作家さんにとってはやはり、
注目してもらうのも一つの仕事かもしれませんね。
今後のご活躍を期待しています!
投稿: Taraco | 2012年1月27日 (金) 05時24分
円城塔氏と人生の岐路
人生の岐路、と言う観点で円城さんを観ると面白いですね。
ちょっと残念なことに、芥川賞受賞後は、田中さんの方が
注目浴びてますけど。
↓のサイトで、円城さんと田中さんの記事がありました。
http://www.birthday-energy.co.jp
まだまだ、円城さんには人生の岐路が多いみたいですね。
投稿: 藍花 | 2012年1月26日 (木) 23時47分