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2013年3月 7日 (木)

「ビブリア古書堂の事件手帖」

 友人が金10の「夜行観覧車」をついつい見ていると言っていたが、我が家も月9の「ビブリア古書堂の事件手帖」を、いつの間にか見続けている。小説の方は本屋さんでカバーを見ているだけで、中身は知らない。ただ、ロングヘアの女性のイラストが刷り込まれていたため、剛力彩芽さん演じる主人公を見たときには、当初はすごく違和感があった。それが次第に緩和され、AKIRAさんともどもいい塩梅に世界観に馴染んできた。
 毎回の、古書をめぐる事件のなりゆきの中から立ち上る人間像が興味深く、息子ともども楽しんでいるのだが、前回の『たんぽぽ娘』では、どうしてあの本を結婚前のフィアンセに贈るのがいいのか理解に苦しんだ。おそらく、この先明らかになっていくであろう、栞子さんのお母さんの家出の理由とともに、スッキリさせてもらえるのだろうが、先が気になって仕方ない。古書店の経営がどうやって成り立っているのかという素朴な疑問を抱きつつ、私などには思いも寄らないほど、本に思い入れのある人というのが意外に多いのかもしれないな…と、ドラマの結末への期待感を高めている。

20130305 古書をめぐる私の思い出を一つ。
 編集の仕事で、どうしても心理学者の河合隼雄さんと会ってみたいと思ったことがあった。当時河合さんは、文化庁長官をされていて、よほどのことでもない限り、一介の編集者なんぞに時間を割いてはくれないだろうと思い、どうしたら会えるだろうかと思いを巡らせていた。そんな矢先、ふとした古書店で『東洋の心』という鈴木大拙さんの著書と出会った。読んだ瞬間、「あ、河合さんはきっと、この本に興味持ってくれるはず!」と根拠なく思い、この本を材料に手紙を書いた。―――そして数日後、私は文化庁長官の執務室にある応接セットの椅子に座っていた。恐ろしく毛足の長い赤い絨毯が敷き詰められた部屋で、なんとなく河合さんには似合わない気がしたけれど、あの時の高揚感は忘れられない。
 一冊の本で、見ず知らずの人と人がつながる…本のパワーって、すごいな…。今も昔もそう思うけれど、具体的にそれを実感した出来事だった。

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