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2013年3月13日 (水)

忘れがたい三星の人

 何かと話題のサムスン電子。今ではすっかり世界的な巨大企業だけれど、私が大学を卒業したての頃は、一般人がその名前を聞く機会は、そんなに多くはなかったと思う。ただ、そんな無名時代のサムスンの一社員で、忘れがたい人がいる。
 友人とソウルへ旅行に出掛けた際、行きの飛行機を降りる時のこと。見ず知らずのオジサンが、まだ女子大生然としたうら若き(?)女性二人組に、流暢な日本語で唐突に名刺を見せてこう言った。
 「この会社、知ってる?」
――― なんなんだ?このオジサンは?!
 陽気で怪しげなオジサンが見せたその名刺には、“三星”と書いてあった。
―――“サンセイ”???
 いやぁ~、ちょっとよくわかりませーん。という顔をして首をかしげていたら、「ビジネスで日本に出張してたんだけどね…」というような話から、ペラペラとあれこれ好き勝手にしゃべりまくって、「じゃ、旅行楽しんで」とニコニコ言って手を振って去って行った。もはや何の話をされたのか覚えてもいないし、活力溢れる元気で変なオジサンの話に適当に相槌を打って聞いていただけだったのだが、イヤな感じはしなかった。(この人、仕事が楽しいんだなぁ…)と思った記憶だけが残っている。奥ゆかしい日本人にはちょっと真似できない自前パブリシティ
 それから二十年近くが経って、ようやく“三星”=“サムスン”だと知った時にはびっくりした。
 あのオジサンはもう、定年退職しちゃってるんだろうか…? 単にあの人の個性として元気だっただけなんだろうけれど、私の中ではどうも、あのモーレツさと現在のサムスンとが、原因と結果のように結びついてしまうのだった。ああいう人種と渡り合うのは、なかなか大変そうだなぁ~。

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