『村上式シンプル仕事術』
火曜の晩、『村上式シンプル仕事術』を読了。実に広範な内容で、“仕事術”というよりは、“村上式人生哲学”的な印象でした。
感想は、それぞれの章についていろいろあるものの、書き出すとキリがないように思えるため、印象的だった部分だけメモしておきましょう。
結構インパクトがあったのは、アメリカ人は、自分の年収を(それが多くても少なくても)、まったく気にせずにおおっぴらに話すという話。大多数の話として一般化できるものかは実体験として検証したことがないのでわかりませんが、キリスト教という信仰の前では、この世のことは皆、地上にへばりついた些細なことなので、お金を稼いでいようがいまいが、そんなことで人の優劣は決まらない、というコンセンサスがあるとのこと(まぁ、そんなことは宗教で説かれなくても当たり前のことですが…)。とかくお金の話はタブー視される日本とは、一線を画している感じ。
また別の話として、“働く”者は皆、すべからく“お金”のことを考えなければならないとのこと。技術者であっても、財務三表くらいは読めるくらいの知識を持って仕事に取り組まなければ、会社の持続は望めないと。結局のところ会社という所は、自社の仕事によって社会貢献しつつ、利益を上げることでさらなる貢献ができるのであって、継続しなければ意味がないと。
他にも、国外の人と仕事するときは、宗教・歴史・哲学の最低限の素養が必要であるということで、それを身につけるための指南本の紹介など、およそ世に溢れる“仕事術本”にはあまり書かれていないようなことが半分以上を占めていて、驚きました。
そして、教育に関しても、あるトポロジー学者が村上氏に話してきかせたこんなエピソードが――。「日本の教育は、“簡単なコンセプト”の“複雑怪奇な問題”を解かせることに終始しているけれど、アメリカの教育は、“複雑怪奇なコンセプト”の“簡単な問題”を考えさせることに重点を置いている」と。その学者さんは、日本の複雑怪奇な問題回答訓練を「時間の無駄!」と切って捨てていました(苦笑)。
理系的思考アプローチを重視する村上さんには是非、次回作として、教育改革本を上梓していただきたいものです。
最後に、もっとたくさんの人が量子力学を学ぶべき、という話にも共感。今の世の中、見えないところでかなり量子力学のお世話になっていることをもっと認識すべきだと。学生時代に見せてもらった映像が、いまだに脳裏から離れない私ですが、そんな哲学的ショック体験を胸に、日々の仕事に取り組むだけでも、襟を正す姿勢になりそうです。稀有な仕事本を、ありがとうございました。
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