身近なアイディア#13
3月上旬くらいからか、通勤電車の車内で、ビールの広告ポスターをたくさん目にするようになりました。各社、豪華な顔ぶれの広告で社内を賑わせています…。ちょっと暖かくなってきて、乾燥しているので、飲む人が増える季節なのでしょうか?
私がここ1年ほどで「おいしいな」と思ったビールやノン・アルコールビールとしては、「YONA YONA ALE」と「ALL-FREE」の2種があります。どちらもあまり苦味がキツくなく、なんとなくフルーティーな感じがして、女性好みの味なのでは?と思えました。
そんな中、サントリーがアサヒを提訴したとのニュース。変化の激しい業界で、大人な企業同士がなぜ?!と思いましたが、事前の話し合いでは埒が明かず、やむをえずの対処なのかもしれません。そもそも、“おいしさ”の基準や好みはかなり人それぞれな気がしますが、その科学的な数値化がなされているらしき特許公報を見てみました。
特許第5291257号。広告でもよく使われる“キレ”という抽象的な言葉が多用されているのが意外でした。
「ビールの科学」という本によると、キレというのは、味の落差(何と何の?)が大きいほど強く感じられるとのことですが、その味は糖質の比率によって感じ方が変わるとのこと。ぶどう糖・果糖という単糖類、ショ糖・麦芽糖といった二糖類、それ以上のオリゴ糖や多糖類の比率が、味に大きく影響するそうですが、低糖質・低カロリーの実現のためには、これらの総量を減らす必要があります。そして、いわゆる“ボディ感”(何?)を感じさせてくれるのは三糖類だというのが業界の常識だったようなのですが、この特許では、その三糖類の比率を下げることによって、予想に反してキレが出た!という文脈でした。【発明の名称】は「単糖類及び二糖類の比率が高いノンアルコールのビールテイスト飲料」。
内容は、ひたすらこの糖類やエキス分やカロリーの比率を様々な範囲に限定することで、権利化がされているようです。この業界のことを知らずに無責任なことは言えませんが、こういう“ものを混ぜる比率”が権利化されてしまうのは、個人的には“味の追求”の自由度を減殺させてしまうような気がしないでもありません。とはいえ、「ALL-FREE」のおいしさは、こういう試行錯誤の末に実現されたんだ~!という気づきは感動モノです。
それにしても、“キレ”とか“ボディ感”なんて言葉が、科学的な定義もなしに公的な文献に使われてOKなんだー!というのが一番の驚き。人さまざまな味覚をして、最大公約数に“旨い”と感じさせる普遍的(?)な味の追求って、難しいことでしょうねー。裁判の行方、気にかけておきたいと思います。
さてさて、1クールの期間お届けした「身近なアイディア」シリーズでしたが、これにていったん終了致します~。お付き合いいただきありがとうございました!
【IPDL→PlatPat】 特許情報検索システムの移行期(“衣替え”、と、うまいこと言っている方がいました)です。よりフレンドリーに、使い勝手がよくなるそうですが、ネーミングとしては、私はIPDLの方が好みでした(^^;;。ところで、IPDLの商標・称呼検索で「プラットパット」と検索すると、本家以外にもいくつか出願されていますね、、(汗)!
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