補助事実の自白と自由心証
先週受験した試験で、いろいろとやらかしていることに気付いては、意気消沈する日々ですが、中でも、まったく割り切れずにいるのが、「補助事実の自白と自由心証」の論点。
民事訴訟には、弁論主義の第1~3テーゼというのがあり、「裁判所は、当事者の主張しない(要件)事実を、判決の基礎として認定してはならない」、「裁判所は、当事者間に争いのない(主要)事実は、そのまま判決の基礎として認定しなければならない」、「裁判所は、当事者の申立てない(主要)事実を、職権で取り調べてはならない」というルールで縛られるそうなのですが、“人の心”がそんな単純なルールでコントロールできるものだろうか?というのがそもそもの疑問。
例えばAさんがBさんに対して「Bさんは私の悪口を言ったので謝ってもらいたい!」と訴えたとき、Bさんが、本当は悪口なんて一言も言っていないにもかかわらず、「はい、言いました」と言えば、裁判所は「Bさんは悪口を言ったので、Aさんに謝ること」と命令することになります(“悪口”って何?という定義の問題は置いておくとして)。
これだけでもすごく気持ち悪い上に、私はどうも、主要事実・間接事実・補助事実の違いが全然わかっていない模様。立証のために積み上げなければならない事実は膨大だと思いますが、大部分は間接事実か補助事実ですよね?
先週の朝のNHKの、「世界のニュース ザッピング」のコーナーで、微笑ましい動画が流れました。赤ちゃんが、口の周りにクリームをべったり付けた状態で、明らかにケーキを食べましたって顔をしてるのに、お父さんから「パパのケーキ、食べた? 食べたでしょ?」と何度訊かれても、「ううん、食べてないよ。食べてない。」と断固否定し続けるという動画(笑)。
これを見て、カワイイ♪と思うと同時にまた考え込む私。事例が適切でないとは思いますが、この場合、「赤ちゃんがケーキを口でモグモグして、胃袋にそれを流し込んだ」というのが主要事実? 口の周りのクリームは間接事実? カップケーキのカップについた赤ちゃんの指紋は補助事実?間接事実? もしお父さんが直後に、赤ちゃんの口内や胃の内容物採取をしたり、胃袋のレントゲン写真を撮って、それを証拠に、「食べた」と主張すれば、赤ちゃんがどんなに「食べてない」と主張し続けても、“動かぬ証拠”となりうるのか? それが偽造でないかどうかの確認は当然されるのか? これらの判断に、裁判所は自由心証を働かせていいのか? 逆に、レントゲン写真に空っぽの胃袋が映っていても、赤ちゃんが「食べた」と言えば、赤ちゃんはクロになる? “動かぬ証拠”と主要事実の認定と自由心証との関係もよくわからない…(汗)。
何かのハプニングで、たまたま赤ちゃんの口の周りがクリームだらけになってしまっただけで、本当は赤ちゃんは何も食べていなかったのに、間接事実と補助事実に対する裁判所の自由心証によって、「口の周りのクリームは、赤ちゃんがケーキを頬張った動かぬ証拠だな…」という心証が形成され、それ以外の“動かぬ証拠”がなかった場合、議論の結末は一体どうなるのか??
当事者間の紛争の公権的解決が“裁判”というものなら、公権が関与する時点ですでに、主要事実すら自由心証に委ねられているように思えてしまうのは私だけ???
あー、気持ち悪い気持ち悪い…(半年間、何を勉強していたんだ?って感じでお恥ずかしい…汗)。
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