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2016年2月20日 (土)

女傑たちの見た未来

 朝の連続テレビ小説で、広岡浅子さんがモデルの“あささん”が、女子大設立のために奔走しつつ窮地に陥っていた今週、私は『辨理士井上清子特許事務所 創立四十周年の歩み』という冊子(第二次大戦前後、事務所立ち上げから軌道に乗せるまでの井上先生の歩み)と、1982年の『パテント vol.35 No.4』中の「エネルギーと工業所有権」という井上先生の寄稿文を読みました。
 井上先生はずっと、男装して仕事されていたと聞いていたので、(失礼ながら)「変人扱いされなかったのかな?」と思っていたのですが、その冊子に掲載されていたお写真は、ホントに品のいい“おじさん”のようで、ごくごく自然で驚きました! まぁ、今でいうパンツスーツで決めている粋な装いだったのかもしれませんが、なぜそのような姿でいることにしたのか、に触れる文章は未だ見つけられずにいます。ただ、女性には司法試験の受験資格すらなかった当時、男性に伍して仕事するぞ!という気概の表れだったのかもしれませんし、はたまた単に、飾り気なくサバサバした性格がそうさせていたのかもしれません。
 “あささん”の話は百数十年前、井上先生の話は80年前くらいのことですが、どちらも女性には束縛の多い時代。(“あささん”はかなり恵まれた環境にあったとはいえ)さぞご苦労も多かったろうと思いつつ、一心不乱に突き進むお二人に共通するのは、“知らないことを知る楽しさ”を自覚されていたところのような気がします。また、ご両人とも市川房江さんと交流があったらしく、女傑はどこかでつながっているものか?!と驚きました。
 ともかく、井上先生の、真面目で実直で、使命感に燃える文章の書きぶりに、心打たれています。特許制度についても、社会の大きな問題解決のために、異分野でも活用し合い、「野に遺賢なからしめる」という考え方で策を講じられるように活用されるべき、と書いておられました。
 本冊子の中に、井上先生のご自宅で事務所の新年会を行った際の写真があったのですが、床の間に、「萬物生光輝」という書が掛けてあったのが印象的でした。

 こうした女傑たちの活躍で、今の女性たちはずいぶん恩恵を受け、昔よりはかなりマシな環境にあると言えるでしょう。ただ昨今は、女性の仕事と少子化をセットで考えざるを得ない難しい時代でもあるようです。先日のNHK「ニュース深読み」での小野アナウンサーの「捨て石」発言は、それを象徴しているかのようでした。
 私のように、“仕事も家庭も中途半端”という悩みもあれば、“仕事一筋で子どもが持てなかった”という悩みも、“家族のために仕事をあきらめた”という悩みもある。また、経済的には子どもを増やすべきであっても、地球環境的には生物の許容量は限られてもいて、これまた難しい。
 みんなが知恵を出し合って、どこかで妥協し合って、社会システムの最適解を見つけなくちゃならない。そういう意味では、人間はみんな、将来世代への“捨て石”じゃないかと思えます。家庭に貢献するか、広範な社会に貢献するか、どちらにもほどほどに貢献するかの違いだけ。税金の使われ方の不公平は、トータルな視点でされるべきだし、そもそも生まれも育ちも健康状態も、あらゆるパラメターを考慮したうえでの公平の検討は不可能に近い――。少なくとも今のところ、女性が生き方の選択肢を増やしている流れは、間違ってないんじゃないでしょうか。
 

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