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2016年3月24日 (木)

「しなやかな著作権制度に向けて」

 火曜日、明治大学で行われた「しなやかな著作権制度に向けて ~権利制限・利用許諾を中心に~」というシンポジウムに参加しました。登壇者は、中山信弘氏・金子敏哉氏・上野達弘氏・田中辰雄氏・福井健策氏・前田健氏の6名。事前に中山先生の『著作権法(第2版)』を読破してから伺おうと思っていましたが、3分の1ほどしか読み進められないままの参加となりました(汗)。
 勉強になったことは確かなのですが、大雑把な感想として、実社会では「今」切実に困っているのに、なんだか悠長な議論に感じられました。実務で問題解決に臨まれている福井先生と、学者先生方の、スピード感・スタンスが、ずいぶん違う印象。。。
 今年度末で中山先生が退職されるとのことで、その最終シンポジウムに参加でき、最終スピーチを聴けたことは幸いでした。
 兼ねてより、世界共通の著作権管理組織を夢想する私としては、田中先生の「ぼくのかんがえたさいきょうのちょさくけんせいど~新たな方式主義の構想~」が最も興味深かったです。中でも、「許諾が唯一のモラルではない」という主張は、今後の著作権教育を考える上で、考えてみたいテーマでした。田中先生の提案された“著作権取引所”構想は、「登録しない場合→報酬請求権」という部分のスキームを、もっと具体的に伺ってみたかったです。

 以下、雑駁にメモ。
・拡大集中権利管理制度(ECL)の模索は、世界的兆候
・EUの著作権コードでは、第5章が制限規定
・ロイヤリティ還元は当然のこととして、権利処理コスト(時間も)の低減が最大のポイント
・YouTube上には1分間に1800本の動画がアップロード(年間約10億本!)
GPL(オープンソース・ソフトウェアのライセンス)の諸問題の確認必要あり
・個別のコンテンツの許諾の取りやすさを指標に検討を進めるべき
 (ライセンス・スキームがあるなら、フェアユースにすべきではないか否か? 福井v.上野)
・「どぎまぎイマジネーション事件」「ときメモ事件」に、「改変」と「翻案」の問題残存
・TPPによる非親告罪化要件は3つ(①市販作品の利用、②原作のまま、③権利者利益を不当に害す)
 →二次創作はOKながら、権利者不明作品の利用で萎縮の可能性
・プラットフォーマー寡占を視野に入れて著作権改正を検討せざるをえない時代
YouTubeRED(月額$9.99)に載らない企業は退場(ESPS:Disney子会社他、1%が削除の現状!)

 個人的には、YouTubeRED含め、JASRACやiTunes等、クリエイターへの還元方法がどうなっているのかを具体的に把握しないと、取引所構想をまともに考えられない気がしています。また、スッキリとわかりやすい法律にしたら、法学者や弁護士さんのニーズが減る…なんて懸念がブレーキになっていないことを願いますが(苦笑)、少なくとも今の制限規定は“美しい”には程遠く、学者の先生方が“一般市民にわかりやすく”ということをどのくらい重視するものなのかも聴いてみたいところです。

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