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2016年3月11日 (金)

「アメリカ商標法の基礎」

 先週聴いた「アメリカ商標法の基礎」というe-Learningが面白かったので、自分用にメモ。
 ワシントン大学の竹中俊子先生の講義でした。副題として、「色や音声等新しいタイプの商標(トレードドレス)の保護」とある通り、日本国内でも色や音の商標が認められることになったのに併せ、米国の制度を紹介してくださるという趣旨だったようです。比較文化のような感じで興味深く聴講しました。

・50州各州ごとの保護制度と、13区すべてを含む連邦全体での保護制度のデュアル制度
 (判例は、各州・各巡回区ごとでそれぞれ適用)
・未登録が原則であり、必要に応じて適地で登録
 →どんなに事前調査しても、完全な侵害回避は難しい
・CJEU:EUの最高裁判所のようなもの
・識別力(Fanctionality)には以下の5段階がある
 (1) Generic (2) Descriptive (3) Suggestive (4) Arbitrary (5) Fanciful
 → (1)はsecondery meaningを立証しても識別力は認められない:Aspirin、Kleenex
 → (2)はsecondery meaningを立証すれば識別力は認められる:BEST BUY
 → (3)-(5)はsecondery meaning不要(inherently Distinctive)
・インテリアの保護:Two Pesos Inc. v. Taco Cabana
・単色の保護:Qualitex Co. v. Jacobson Products
・製品形状の保護:Wal-mart stores v. Samara Bros. Inc. 、TrafFix Devices v. Marketing Display Inc.     

            Apple v. Samsung (CAFC May 18,2015)
・色の商標の保護範囲:Christian Louboutin v. Yves Saint Laurent
・音声の商標:Ride the Ducks v. Duck Boat Tours
・Look & Feelの保護:Ingrid & Isabel, LLC v. Baby Be Mine
・販売手法の保護:Abercrombie & Fitch v. American Eagle Outfitters
・その他(動き・香り・味・建築物)

 いろいろな判例を見るにつけ思うのは、「規範の普遍性」というものについて。日本は少なくとも、最高裁判例を最上位に据えたピラミッド型ではありつつも、国内は一色の規範で染められていると考えられます。一方、アメリカやEUは、各州・各国ごとの規範と、連邦の規範が混在して、地域ごとのパッチワークのよう。かといって、これらの一色一色の地域が堅牢な規範に則って、価値観が統一されているかといえば、決してそんなことはなく、結局のところ、どんな裁判官に当たるかという運のような要素もぬぐいきれず。。。大きなトレンドのようなものを掴むよりほか手立てがないというのは、理系人間には耐えがたい感覚です(苦笑)。

 今回ほほぉ~!と思ったのは、アメリカでは、特許・意匠・著作権・トレードドレスでの重複保護を可能としているという点。裁判ではよく、PatentとDesign PatentとCopyrightとTradeDressがオーバーラップして議論されるというお話が印象的でした。それにしても、商標は未登録が原則、というのは、著作権にも似て、日本以上にウカウカしていられない感じがします。権利者の“監視負担”にも限度があるでしょうが、せめて、世界共通の具体的規範があればいいのになぁ…と思ってしまうのでした(苦笑)。

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