« 顎の傷 | トップページ | 「パパイヤリーフ」→CAFE会 »

2016年4月16日 (土)

フランク三浦とエレン先生

 ここ数日、業界で話題騒然の「フランク三浦」と「エレン・ベーカー先生」―――。
 各々、商標と著作権の問題ですが、「パロディ」と「二次創作」について考えさせられました。以下はあくまで個人的見解です。
 フランク三浦事件は、高級腕時計のブランド「フランク・ミュラー」をパロって、安物腕時計を「フランク三浦」ブランドで発売した会社が、こともあろうか、そのブランドを商標登録したところ、本家がそこへ無効審判を請求し、特許庁では無効と判断、それに反発した会社が審決取消訴訟を提起したらば、知財高裁が
審決を取り消したというもの
 エレン先生事件は、東京書籍発行の英語の教科書『NEW HORIZON English Course』の挿絵で登場したエレン・ベーカー先生の可愛さがネットで話題となり、それに触発された人たちが、諸々のパロディをpixiv等にアップロードしたりする中、ある人が正規ルートで許諾を得て二次創作しようとしたことに対し、「黙認されたかもしれないのに、余計なことをするな」と炎上しているとかいないとかいうもの。
 フランク三浦事件の方は、個人的には、「パロディの登録はやはりアン・フェアじゃないかな…?」という思いで見ています。うちの夫などは、「フランク・ミュラーなんてブランド、この事件で初めて知った!」と言っていたくらいなので(汗)、名声毀損よりは宣伝効果の方が大きかったのかもしれませんが、「パロディ時計」であることがWeb上で明言されている以上、フリーライドしているのは間違いないわけで。。。法文解釈上、たとえ非類似で登録可能と判断される場合でも、パロディはある種の二次創作と考えると、本家本元の許諾を得るのが筋に思えてしまいます。今回の場合、もしこの会社が「パロディ時計」の販売許諾を求めたとしても、到底OKされたとは思えませんので、販売がNGである以上、商標登録はもってのほかと考えるべきではないのかな?と。。(本家本元がOKなら、もちろん登録もアリでしょうが、今回の裁判費用を本家本元が支払うことになるなんて、あまりに不合理では?!)。
 でもって、エレン先生事件は、きちんと手続きした上で二次創作しようとした人が非難されるのは、現行の著作権法下にあって、筋違いであることは間違いありませんが(、フランク三浦というパロディブランドを商標登録出願しちゃった上記会社と、ちょっと似た印象になってしまい)、コミケ文化に浸っている人には、憤懣やるかたなく感じられたのかもしれません。また、話題沸騰(やパロディ・二次創作)をやや歓迎したい気持ちもなきにしもあらずの出版社でも、立場上、問い合わせを受ければ無償でOKとは言いづらく、管理を委託されている教科書著作権協会ではなおさら、杓子定規に対応せざるをえなかったのも無理からぬこと。著作権は結局、本家本元がどう考えるかが問題解決の糸口にならざるをえませんが、正面きってなんでもOKとするには勇気もいり、結局は要申請・禁止に傾きがち。
 
 いずれも、本家本元には思いもよらないような“使われ方”をしたという点は同じですが、一方は憤慨、一方はある種歓迎…という心証の違いがあり。。。ひと昔前なら、そこここでそれとなく起こり、それとなくウヤムヤになっていたようなこうした事件が、ネットの訴求力によってあっという間に拡散し、たくさんの人に考える機会を提供した印象。。。(特定侵害訴訟代理って、やはり中途半端だな、という印象も受けざるをえませんでした)。
 こうしてみるに、「パロディ」「二次創作」については、本家本元の考え方を尊重して対応するのは当然ながら、本家自身も、自分の権利について、「どこまでならOK」という利用可能範囲声明を、積極的に自ら発していく必要があるように思えてなりません。「黙認文化は黙認文化のままに」というのは日本的かもしれませんが、ケースバイケースで、ある程度の線引きをしてもらわないと、ネット上で存分に遊びきれないのも事実(^^;;;(by 著作権の登録制度を実現したい一個人)。
 結局のところ、“お墨付き”を得たらもはやパロディじゃない、リスクを負わないパロディはない…ってことで、パロディさんたちには、当面アンダーグラウンドで頑張ってもらいつつ、本家本元さんにも、“だんまり”にとどまらない、粋な計らいを求めたい、と思えました。

【※】 現在は、「フランク三浦」の通販サイトから、“パロディ・ウォッチ”を謳う文言は削除されています。
    →2016/05:フランク・ミュラー側が最高裁に上告…! さぁ、どうなる?!

|

« 顎の傷 | トップページ | 「パパイヤリーフ」→CAFE会 »

学問・資格」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 顎の傷 | トップページ | 「パパイヤリーフ」→CAFE会 »