Archive Summit 2016
金曜の夕方、日比谷図書文化館で行われた「アーカイブサミット2016」のシンポジウムに参加。
かつての文化財アーカイブとか、科学情報アーカイブとかへの関心をとっかかりに、好奇心持続中(笑)。
日中のセミナーはニコ動で配信され、3万人近くの視聴があったそうですが、私は参加も視聴もできませんでした。まぁ今回は、前国立国会図書館長の長尾真氏の肉声を聴く、というのが最大の目的だったので(笑)、それが果たせたので良かったです。あとは、著作権処理とかアーカイブについて問題意識を共有している人の存在を感じられたことも収穫。(野口祐子氏のお話し〔フリーの気象データを近未来予測に利用して起業した事例紹介〕や、PDとなった『不思議の国のアリス』の舞台の話が聴けなくて残念!) 以下、自分用メモ。
◆シンポジウム登壇者
赤松 健氏:漫画家、日本漫画家協会理事、マンガ図書館Z運営
瀬尾太一氏:写真家、日本写真著作権協会常務理事宮本聖二氏:元NHK、デジタルアーカイブス各種立ち上げ後、Yahoo!へ
福井健策氏(司会):弁護士
◆アーカイブの最大の問題点
・宮本氏:いかに利用させるか?(立ち上げても利用されずに閉鎖の憂き目多数)
→ネットワーク化して利用者増やす、キュレーションで魅力アップ(戦争、震災)
→それでも横ばい(娯楽目的でない資料性価値の高いコンテンツの蓄積への意味付け…)
・赤松氏:コンプライアンス至上主義の打破(善意の検閲者に対抗)
→円滑なライセンシング(裁定制度の問題点洗い出し:グレーでも良識的に使ってみる)
供託金:定価×通例のロイヤリティ×閲覧数×年数(国会図書館事例)
・瀬尾氏:オーファンワークス問題(パブリックドメインになったかどうかすらわからない)
→拡張裁定制度トライアル(相当の捜索や供託金算定を、団体が代行)
法改正を待つより、現法制下でできることを、スピーディーに安価にできる方法模索
・福井氏:供託金算定解説(権利者出現率0.6%のために何十億もの供託金?!埋蔵金の行方?)
◆2020年までに行うべき方策を1つ
・宮本氏:デジタルアーカイブの思想・その価値を広く共有すること
(厄介な疑似著作権主張:放送はできてもデジタル配信はNG:レベニューシェアの要求)
①NDA(National Digital Archives?)ポータル制作をスタートさせる
②機関の発足
③メタデータの標準化
④各種デジタルアーカイブスのネットワーキング
⑤多言語化
⑥人材育成
⑦各文化施設でのDAの充実(←ここ、失念)
⑧スマホ向けにも
・赤松氏:柔軟性の高い権利制限規定に(政治の流れにうまく乗ることも必要)
・瀬尾氏:集中処理機構が代行
文化省「情報アーカイブ庁」の設立
・会場1:供託金の仕組み→基金、保険、現実的な金額設定の実現
・会場2:サーバの置き場所等、よりやりやすい環境で
・会場3:知財戦略本部方針と矛盾しないにせよ、委託団体の業務代行はそんなに簡単か?
・会場4:オープンデータの問題意識と酷似(未来志向の問題解決を望む)
◆閉会宣言(長尾先生)
NDAセンター構築を! サミット第3回は是非京都で!
私はどちらかというと、書籍や論文等のアーカイブを中心に考えていたため、動画のアーカイブに尽力されてきた宮本氏のお話しが興味深かったです。amazonですら、ロングテール本の収蔵を維持できているのは、売れ筋本があってこその構造だと思うので、資料性価値はあっても娯楽性に欠ける動画のアーカイブスの苦戦は当然と思いつつ、NDA実現のためのメタデータの標準化とか、サーバやネットワークの構築・保守・管理のコストとか、技術的・コスト的・組織的な問題が想像以上にネックかもしれないと感じました。
翌朝の「新・週刊フジテレビ批評」に、日テレを出て“アプリオ”という動画配信会社を設立された元プロデューサーの三枝さんという方が出ていました。TV業界を出てみて初めて、そのメディアパワーを実感しているとのことでしたが、同時に、スマホによってそのパワーが分散化しているのも確かだそうで。アーカイブスの使いやすさも、TV・スマホ並みの手軽さにしないと、高いお金だけかけて、研究者や数寄者だけの象牙の塔になることが懸念され、「いかに使いやすくするか」というキュレーションは、社会的な理解を得るには不可欠だと思えました。
(それにつけても、何か調べごとをするでもなく、溢れる現役コンテンツだけで満足している人に、過去のコンテンツのアーカイブを作る意義をわかってもらうのって、難しいことですね~)
【EU動向】 2020年までに科学論文がオープンアクセスに?!
【福井先生まとめ】 昨今の動向をまとめて解説してくださっています。
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