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2016年6月 2日 (木)

『なんでコンテンツにカネを払うのさ?』

20160531  先週、外出先でフラリと立ち寄った書店で見掛け、またしても衝動買いしてしまった本。弁護士の福井健策先生と、岡田斗司夫さんの対談本で、2011年12月発行なので、もうずいぶん古い本でした。岡田さんは、時に本質的・核心的なところを突きつつも、基本的には思考を引っ掻き回す方、という印象だったので、「うわぁ、福井先生、チャレンジャーだぁ」と、ついつい手に取ってしまったのでした。あいかわらずの岡田氏節と、大人でしなやかな福井先生を垣間見た一冊でした。

 以下、自分用メモ。
・p.50:著作権とは「情報コントロール権」、情報は「非競合的」「非排他的」
・p.53:プラトンとアリストテレスの寓話。「プラトンが人の意見を文字として記そうとしたら、アリストテレスが反対する」――意見は、文字として固定化することで、客観性を持った実在になり情報として流通できるようになる、とするプラトンに対し、固定化してしまうと意見を述べた人の人格や重み・言葉のニュアンスといった要素がすべて消え失せて別のものになってしまう、とするアリストテレス。――思想・感情の固定化とは?
・p.57:大陸法的な考え方では、著作物はクリエイターの人格を体現したものと捉える。英米法的な考え方では、著作物はクリエイターからは独立した別個の存在で、その情報はできるだけ自由に流通するようにしてやろうとする。
・p.69:引用は法律で認められているけれど、実際どこまでが引用で許されるのかはグレーの領域も大きい。だから若干は冒険も必要になり、そうしたリスクを取らないとなかなか面白いものは作れない。
・p.110:創作だけでは食えないクリエイターが大部分→複雑になりすぎた仕組みから、ベーシック・インカムへ、という考え方もなきにしもあらず。
・p.115:福井先生「私は著作権が大好きというある種の変態(笑)ですが、法律自体が好きなわけではありません。情報はいったい誰のものなのかとか、情報流通のあり方を考えるのが好きなのです。」:♪
・p.143:書籍版のJASRACに当たる仕組みについては、経済産業省、文部科学省、総務省の三省が開いている「デジタルネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会」(通称:三省デジ懇)で提言されているし、映像についても経団連が何年も前から提言しています。〔国会図書館の電子図書館構想、ユーロピアーナ、グーグルブックス〕
・p.160:「全メディアアーカイブ構想」2010年に日本知財学会で福井先生が発表した思考実験。
・p.218:「長い歴史の中で、本来情報は誰もが自由に利用できるものでした。著作権という考え方が生まれてから、まだ300年程度しか経っていません。私たち自身で著作権がどうあるべきかを考えないで、いったい誰が考えるというんでしょう。実験と検証をくり返しながら、著作権と情報流通の対話を続けていきましょう。」!

 読後、家族に「なんで小説とか音楽とか映画とかにお金を払うの?」と訊いてみました。
息子:「作った人の生活のため。でも、払わなくていいんなら払いたくない」
夫:「感動への対価。でも作者が払わなくていいって言うんなら、払わずにいるのもやぶさかでなし」
…まぁ誰だって、図書館ですべて鑑賞できるなら、それに越したことはない、と思うよね…(苦笑)

――本書では、有体物と無体物の流通をゴチャマゼに議論していた印象ですが、「無体財産権って?」というそもそものところで考えてしまいました。特許権は、特許を受けている「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」を保護するものであり、特許請求の範囲と明細書に体現されている(J Plat-Patももっと、普通の図書館のように、普通の人に認知されないと、公開の意味がないですよね)。。意匠権とは「物品の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であって、視覚を通じて美感を起こさせる“もの”の権利」であり、六面図で体現され、いずれは3DのCADデータなんかでも表現可能。。商標権は標章に化体した“信用”を保護するものであり、それを体現する文字・図形等もデータ化可能。。著作権とは「思想又は感情を創作的に表現した“もの”」に関する権利――無体とは言いながら、どれも結局、体現は必要であるけれど、情報化の進んだ昨今なら、データ化してクラウド上に集積可能なものであり、そこからコピーして利用できるという意味で、「非競合的」「非排他的」な情報。
 「全メディアアーカイブ」は本来、ベルヌ条約加盟国全体でのWIPO的組織が運営するのが最終目標と思われます。いろんな人がいろんなアイディアを提示してくれている中、自分の判断材料は以下。

【不公正問題】(本当は二の次に考えるべきこと)
・上流:自分の著作物ではないのに、自分のものであると主張する人がいる
・中流:不公正な中抜きをする人がいる
・下流:海賊版等の不正な複製をする人がいる

【本来問題】
・すべての著作物のアーカイブを実現したい
・そのアーカイブに行けば創作者・権利者がわかるようにしたい
・著作物ごとに、創作者・権利者が権利範囲の設定をできるようにしたい
・パブリックドメインであるかないかを明確に把握できるようにしたい
・権利処理をワンストップで行えるようにしたい
・著作権者不明作品の利用もワンストップ処理に含めたい
・権利者と利用者の間のハブは1つにしたい。そのハブを通して、精算も権利処理も済むようにしたい
・コンテンツ利用に対する精算はできるだけ自動化したい

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