新海監督の空気感――「君の名は。」2回目
(ネタバレご注意願います)
新海誠監督の「君の名は。」――、先日の試写会に引き続き、監督の舞台挨拶付の回を再び観てきました。
息子が、どうしても読んでいけ、と言ったスピンアウト小説もしっかり読んでいきました(笑)。
なるほど、些細なワンカットにも重層的なドラマが秘められていることに気づき、三葉の父や勅使河原君が、すごく愛おしく思えました(私が二次元的にいちばん好きなのは、藤井司君なんですが…笑)。
今回の作品中のお気に入りシーンは、一葉おばあちゃんが、真っ赤に紅葉した山の中で、「結び」について語るシーンと、千駄ヶ谷駅直前で併走する2台の電車のドアのガラス越しに、瀧くんと三葉がお互いに視線を交わすシーン。どちらも、無意識のうちに心を奪われるシーンでした。
特に電車併走って、現実でも、なんだかドラマが生まれそうな瞬間に感じられ、私はいつも、並んで走る電車の車内を注視してしまいます(笑)。
観れば観るほど、綿密に丁寧に練られた作品で、パンフレット巻末でアニメ評論家の氷川竜介さんが書いておられるように、間違いなく“輝かしき青春映画の傑作”だと思います。「時をかける転校生」という分析も、「確かに~!」と膝をうちました(笑)。
ただ、とうに青春時代を遠く背にした私としては、「彼女と彼女の猫」から「言の葉の庭」と本作を通して、一番好きなのはやはり、切なさNo.1の「秒速5センチメートル」。単に好き嫌いの問題で、どうしてと言われても返答に困るくらい、他のどの作品も好きですが。。。
でも、「秒速」以上に好きなのは、新海監督の、創作に焦がれるココロ――クリエイター魂。今回、再鑑賞による感動に加えて、何より楽しみだったのは、ナマ新海さんの空気感に触れることでした。 上映後、舞台に現れた新海さんは、すごく充実感がみなぎって、予想していたよりも溌剌とされていました。写真撮影OK、観衆からの質問も受け付けてくださるというサービスぶり。15分ほどのスピーチは、理路整然としてわかりやすく、すごく緻密な性格ながら、ロマンチストでちょっとお茶目で、でもすごく気遣い細やかな監督の優しさが感じられました。「まだ遭っていない男女の出逢いを描きたかった」というとっかかりから、どのようにプロットを組み上げていったかのお話には、「そんなに緻密に考えるんだー!」とビックリ。今回のドラマチックでハッピーな大団円の舞台裏を垣間見た感じ。Radwimpsさんとの曲作りも、様々なやりとりがあったようで、映像と音楽のフィット感はいつもながらピッタリ♪
とはいえ、私の中では、あまりに見事なプロットの組み立てが、これまでの抒情的な作風から離れている気がして、ちょっと新海さんっぽくないな~と思っていました。
それも、ある男性客からの質問に応えておられた彼の言葉で、なんとなく納得感が得られました。
「“秒速”ではふたりがすれ違ったまま終わりになりましたが、今回、“出逢い”をエンディングに持ってきたのは、ボクが変わったからだと思います。」―― 確かに、2007年の頃の私と、2016年の私は違う。新海監督にも、観客にも、世界にも、長い長い9年半でした。2011年もあり、劇的に変わらないはずがない。。。
「また3年くらいのうちには、新しい作品が作れると思います――」
そうですね。そうこなくっちゃ! 一作品一作品を楽しみつつ、その全体的な変化をこそ、最も楽しみにしている私がいます。
なんというか、新海監督との遭逢は、「君の名は。」とシンクロして、“やっと遭えた…”という印象的な思い出になりそうです。
【3回目】 …ということで、本日は家族3人で3度目の鑑賞へ!! また新たな発見があるかしらん?♪
| 固定リンク
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- 劇場版「PSYCHO-PASS PROVIDEN」(2023.05.19)
- 「視点・論点」星野直子さん(2023.05.15)
- ファイル記録事項の閲覧請求と「それパク」(2023.05.13)
コメント