水際対策セミナー
昨夕行われた水際対策セミナーに、興味本位で滑り込み参加してきました。
東京税関の知的財産調査官の方が二人もいらっしゃり、手続きの概要解説をしてくださった上、YKK株式会社と、CHUMSの事業会社の方と、弁理士2名を加えたパネル・ディスカッションも行われ、とても勉強になり面白かったです。
最も印象的だったのは、日本の税関は非常に優秀で献身的だー!と思えたこと。アメリカや中国の税関が、かなりの割合(半分以上!)で真正品まで差止めてしまっているのに対し、日本の税関の識別はとても丁寧で正確のようです。そして、申立ても認定手続きもかなり簡素化されてきているので、是非事前に相談して(無料!)、商標や著作権の侵害についてはキッチリ申立てして欲しい、とおっしゃっていました。職権差止というものもないではないけれど、権利を推定して差止するのは難しい半面、一度申立てされた権利に関しては、類推摘発も可能な場合があるからだそうです。
申立てに際しては、
1.侵害と認める理由(いかに似ているか)
2.識別ポイント(真正品と見分けるための具体的商品知識)
を明らかにした上で、書類作成して欲しいとのこと。詳しくは、税関HP内の「権利者の方へ」というコーナーを参照した上、躊躇せずにまずは相談を!とのことでした。
平成27年の税関における差止実績として、件数は約2万9千件(過去2番目の多さ)、点数は約69万点、被害額は約147億円、全体の約9割が中国からだとのデータがありました。
企業の水際対策の実例も非常に興味深く拝聴しました。私が関心を持っていたデッドコピーとは異なり、ファスナーの粗悪品で、バリがきちんと処理されていないような侵害品が輸入されてしまって、小さいお子さんが怪我をしたというような事例を聴き、「なるほど、そういうスタンスも大事なんだな~」と痛感しました。CHUMSブランドについても、ある店舗で開設されていたCHUMSブランド区画の全商品が模造品だったなんていう酷い事例もあったそうで、世の中に溢れる侵害物品の多さを、改めて考えさせられた次第です。
コーディネーターの大西先生のリードが的確で、訊きたいことをうまく引きだしてくださっていたし、萩原先生の解説通り、民事訴訟を行うより、事前の水際対策の方が、時間的にもコスト的にも効力的にも有効だと思えました。
供託については、侵害者が通関解放を求めた際に命令されることはあっても、権利者向けに命令が出されることは滅多にないとのこと。白黒があやふやな機械のようなものの差止に際しての見本分解検査時に、見本1個分について供託命令が出ることはあるそうで。よほど、「で、供託手続きは弁理士でも代理できるんでしょうか?」と訊きたかったのですが、今回のセミナーは弁理士会の営業活動の場のようにも思えたため、企業の方々を前にそれを訊くのは憚られました(汗)。まぁ、権利者本人に行ってもらえばいいわけですし、あまり拘っても仕方ないかな。
この日のセミナー内容を実務に活かせる日が来るかどうかは定かではありませんが、税関の敷居がぐっと下がったことは確かです(笑)。どうもありがとうございました!
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