『レシピ公開「伊右衛門」と絶対秘密「コカ・コーラ」、どっちが賢い?』
先日、近所の本屋さんで恩田陸さんの『蜜蜂と遠雷』を立ち読みして、買おうかどうしようか迷いながら店内をウロウロしていて、標題の本の方を衝動買いしてしまいました(苦笑)。正式タイトルは滅茶苦茶長く、『レシピ公開「伊右衛門」と絶対秘密「コカ・コーラ」、どっちが賢い?――特許・知財の最新常識』です。
とても読みやすい文章なので、あっという間に読めてしまいますが、特許の出願・登録数に応じて糧を得ている人には、考えさせられる内容――「オープン・クローズ戦略」についてが、メイン・テーマの本でした。要するに、特許出願するということは、世間に技術内容をオープンにするということだから、何でもかんでも出願すればイイってもんじゃないよ、という話。私が気になったのは、p.164にあった記述。「経済産業省が発行した『ものづくり白書2013』では、この“オープン・クローズ戦略”が推奨されました。」という一文でした。
私がまだ、法律なんかに縁もゆかりもなく、出版社で本作りしていた2007年頃、経済産業省から飛び出した方とたまたま話をした際、結構真剣な感じで、こんな質問をされました。
「日本の特許出願の検索サイトIPDLへのアクセスって、どこからが一番多いか知ってます?」――
当時、IPDLのことすら知らなかった私は「さぁ?」という反応しかできなかったと思いますが、その答えは、「中国から」で、7割だったか8割だったか9割だったか、とにかく、驚くほど多かったことだけは覚えています。つまり、その頃、本書にも書かれている通り、国外の技術者たちは、日本の特許情報から多くを学んでいたのだと思われ、その事実を国も認識していたということ。で、その2007年頃から、白書が出る2013年頃までの間に、業界関係者がどれくらい“クローズにすること”を念頭に仕事していたんだろう?という素朴な疑問。p.42の出願数推移のグラフでは、2005年くらいから漸減しているから、もっと以前から対策は取られていたのかもしれませんが。。。
その一方、p.47の月別出願件数のグラフでは、年度末に集中する道路工事数と同様、予算消化の出願が期末に集中する傾向というのはあまり改善されていないようで。。。期末になると始まる道路工事を見て、「あ~、税金の無駄遣いじゃ…?」と溜息をつく人は多いのに、合理的なスケジューリングができそうな業界でも、ついズルズル先延ばし…というのは人間のサガなのか。とはいえ、駆け込み出願に対して、綿密なオープン・クローズの検討ができるものなのかは疑問。。。(資金調達のためには特許取得は有効、という考えも…)。
アメリカの女性弁護士さんで、レストラン経営で生活を維持しつつ、自分が注力したい案件だけを受任する人が紹介されていたことがありますが、それが出来れば理想だなぁ~…とは思いつつ、それじゃぁ実務ノウハウはあまり蓄積できないかも…とも思い、遠い目になってしまうのでした。
【全文検索サービス】 昨日、こんなニュースが! この法律が成立したら、一度この世に生まれた本の内容は、データとして末永く残れるようになる…! なんてスゴイことだろう!!
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