『デジタル著作権』
2002年に刊行された書籍。なのに、すごく面白かった! 一般書の体裁ではありながら、かなりハイエンドな内容。たぶん、刊行当時の私では、今ほどには読みこなせなかったんじゃないかと思います。この当時、よくこれだけの著者に、これだけの事を書いてもらえたなぁ…と感心しきりだったもので、本書の版元の知り合いの編集者さんに、企画した担当者を調べてもらったら…。私も少~しだけ知っている人でした! 当時から、すごく知的な雰囲気を醸す緻密な感じの方でしたが、なんと今は、成蹊大学の教授になられているとのこと! 仕事しながら、大学院に通われてたんですね~!! あっぱれ!
で、中身はと言うと…、11人の各方面の専門家が、情報技術とインターネットの発展下での著作権制度について物申しておられるのですが、中でも、名和小太郎先生のパートには、ウンウンとひたすら頷いてしまいました。なんというか、軽妙かつ論理的な語り口が、モロに私の好みで、ツボにハマりました(笑)♪ 名和氏の関心や問題意識にすごく共感したわけですが、特に、「ユーザー不在の議論」を問題視されている姿勢にシンパシーを感じました。名和氏が、ある審議会に参加した際、「議論がユーザー不在ではないか?」と質問したそうですが、そのとき事務局は名和氏を指して、「あなたがユーザーである」と言ったのだとか(p.115)。以来、名和先生は、ユーザーの勝手連を通すことにしたそうです。
誰しもが、著作権法と無関係では生きられない今、“法の不知は守られない”なんて原則に恐れをなさずとも、普通の人が普通にのびのびと、創作や発信が行える世の中がイイな~、、、取り扱い説明書なんて読まずとも、UI に触れるうちに自然と正道を歩めるような世の中がイイな~、、、というのが、法律をかじった私の率直な思い。今後ますます、現今の著作権法について議論されることになると思いますが、私も、この先生の姿勢を忘れずにウォッチしたいものだと思います。
後半に、当時日本ペンクラブ理事だった秦恒平さんの寄稿もあるのですが、コレがなかなか、旧来の著作者の率直な“著作権考察”として面白かったです。
そしてまた、“鋼錬”の実写化で気になる映画監督の曽利文彦さんの考察は、前記の秦さんのものとはまた次元の違う、ボーダレス・マーケットを模索するチャレンジングな印象でした。特に、以下の文章は、私の初心を思い出させてくれるものでもあり、読んだ甲斐がありました!
――(p.317-318より) 日本のアニメーターというのは、あれだけ優秀なものを作っているにもかかわらず、非常に低賃金である。たとえば、ある知人のデザイナーは、アニメのメカ系で優秀なデザインをたくさん制作していて、その出版物などがどんどん世に出ている。彼が本を見せてくれたときに、「この本に君のデザインが出ているけれど、印税はいくらもらっているの?」と聞くと、「いや、知らない」と言う。もちろん最初に作品を作った際に、買い取りというかたちなのだろうが、それ以降はお金など一切入ってこないのだ。本になっていることさえ知らなかったり、あるいは本人が自分で本屋で買っていたりするくらいだ。――
いやぁ~、本書は、もう15年も前の本ではありますが、これから著作権を勉強しようかという人には、是非読んで欲しいなぁ~!
【イマジン】 想像してみて、、、著作権の保護期間が5年になった世界を…^^;;;
【応用美術の著作権保護】 TRIPP TRAPP事件の判決に共感した後、ふと読んだ「応用美術の著作権保護 ―「段階理論」を越えて ―」という論文に感銘を受けていた私ですが、明後日、その著者である上野先生の公開講座が!
【演奏権】 7/14午後の公開講座で“演奏権”について、橋本・福井両先生の講演…聴きたいけどどうしよう。
【確認訴訟提起】 JASRACに対する演奏権をめぐる請求権不存在確認訴訟がついに提起されました。。。音楽教室に限らず、公立学校関係者の方々にも、JASRACの利用規程に一度お目通しいただきたいところ(冷や汗が出るケース、結構あるんじゃないでしょうか…?)。
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