最判平成29年7月10日(訂正の再抗弁について)
先日受講した公開講座にて、ホットな最高裁判例が紹介されていましたのでメモ(いわゆる「シートカッター事件」)。なんとも華やかな顔ぶれの事件で、現場の様子がちょっと想像つきませんでしたが、「訂正の再抗弁と再審請求について」の重要判例の一つになると思われます。第一審判決や控訴審判決、無効審判の審決取消訴訟判決、「パテント2016 No.7」の記事等と、特許第5374419号の公報を併せ、時間を見つけて読んでみたいと思っていますが、ざっくり概要だけ整理。
この判例を解説してくださった先生もおっしゃっていましたが、皮肉にも、特許権が時に、いかにも不安定な権利と映ってしまうことを象徴するかのような経緯――。
魔の平成27年12月16日。侵害訴訟ではXの特許権は新規性なしとしてYの無効の抗弁が認容され、特許庁での無効審判とその後の審決取消訴訟ではYの請求は不成立で特許は有効との認定。。。特許法104条の3の趣旨と、訴訟と並走する特許庁での審判の意義について、毎度考えさせられてしまいます。減縮が認容された訂正審判の審決の、XY間での宙ぶらりん感も、後味が悪い、、、。百万円前後の損害を争って、3年半もの期間、多くの人が労力を使うことの損害こそ算定してみたくなり…複雑な気分です。
X側はおそらく、どこかの段階で、請求項を減縮しないと分が悪い…と考えたのだと思うのですが、そこで即、和解に持ち込むべきだったのか、あるいは別の段階ですべきことがあったのか(訂正の再抗弁を、どういう形でいつすればよかったのか、何もできなかったのか)?が、今一つわかりません。こういう“がんじがらめな”状況に陥りやすいことも、特許権侵害訴訟の原告勝訴率の低迷や和解の多さにつながるのかな?と感じました。
上記は単に、訂正の請求や訂正審判の可能時期の洗い出しのために時系列をまとめただけで、補正内容や当事者双方の技術についてはまったくノーチェックなので、新規性なしという判断の考察はどなたかの分析を待ちたいと思います。
(小一時間で整理しただけなので、間違いがあるかもしれません。お気づきの点はどうぞご指摘ください。)
【cf.】 ダブルトラック規定に内在する諸問題
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