改訂商標審査基準2017
先週、直近の商標審査基準改訂の説明会に参加しました。講師は、特許庁の審査基準室に設置された検討ワーキンググループの一員だった方で、10年近く諸々の改訂検討に寄与されたそうです。まだ、積み残しとして、「公共財産(歴史的・文化的・伝統的価値のある)標章についての取り扱い」や、「大量出願人に対する対応策」等の検討が続いているようですが、何かと変化の激しい昨今、法律改正では現実に即応しきれない部分を、なんとかケアしていこうという姿勢を感じました。3条・4条関係の主な改訂を、以下にメモ。
〔3条〕
・不使用商標対策の機能の強化と明確化
(資格のない者による出願の排除、類似群コードのカウント方法明確化:便覧41.100.03)
・位置商標、立体商標における柱書違反事例の明確化
・1項3号における「書籍の題号」「歌手名」「商品の一部を位置商標や立体商標として出願した場合」の取り扱い明確化
・1項6号における「総論規定」「地模様の範囲」「キャッチフレーズの範囲」の記載と明確化
・2項における「使用商標との一致具合をゆるやかにした」「識別力判断方法を明記」
〔4条〕
・1項7号における「近時の裁判例を基に類型化」「剽窃的な出願の該当化」
(要:便覧チェック)
・1項11号における、現実への親和性アップ
(i)商標の類比を誤認混同のおそれの有無の観点から判断
(ii)審査においては個別具体的な取引実情は考慮しない
(iii)結合商標の要部抽出判断の容易化(cf.リラ宝塚事件)
(iv)「取引実情説明書」の大幅改訂
①類似群コードによる類否推定が審査でも覆る場合を認めた
②親子会社が引用商標権者の場合の不適用
(v)引用商標の存続期間満了後の回復期間を待たずに消滅判断
・1項14号においては、種苗法の趣旨を踏まえた判断へ
(本号非該当でも、3条1項各号に該当し得ることが明文化された)
・「商標法制定の趣旨に反する」→「商標法3条の趣旨に反する」
※精神拒絶の範囲が狭くなった ↓
(本願の指定商品役務) (引例の指定商品役務)
A,B,C A,B,C → 精神拒絶
A,B B →拒絶なし
A A,B →精神拒絶
A,B B,C →拒絶なし
A a →拒絶なし
a A →拒絶なし
(a:「Tシャツ」、A:「被服」では、拒絶なし。概念的検討はせず、あくまで“表示レベル”で判断)
【DBでの予見可能性確保】 123先生のブログによると、年末年始にJ-Plat PatのDB機能強化が図られるのだとか。上記講師が「ユーザーの予見可能性を高めるため」と改訂理由について言及されていましたが、その先鋒となるべきは、公開情報と審決情報のDBの充実度アップに間違いないですね!(民間情報サービス会社への配慮はともかくとして…)
| 固定リンク
「学問・資格」カテゴリの記事
- 調査の果て(2024.07.30)
- 論文や査読や明細書と、OpenAI(2024.05.07)
- 知識と図書と図書館と…(2024.03.26)
- 令和5年不正競争防止法等改正説明会(2024.02.29)
- コンセント制度の導入と氏名商標の要件緩和(2024.02.16)
コメント