『進化しすぎた脳』
ブルーバックス版『進化しすぎた脳』読了。
認知症の症状を間近に見て、その不思議さに触れたり、AI と脳の差や、脳の存在意義について思いを馳せることが増えているため、とても興味深く読みました。
率直に言って、まだまだ脳や心については、ほとんど何もわかっていないのかもしれないな…と思いました。脳の神経細胞が、シナプスを通してどんな風に情報を伝えているのかの解説は、とても勉強になりました。また、“視る”ということがいかにフィルターのかかったものか、“同時”と思っていることが実はそうでないか、“記憶”があやふやなものか、“ヒトの進化”は“環境の進化”になりつつあるか、“脳”がどれほど身体に規定されているか等々、ある意味、哲学のような問答が続くのが、エキサイティングでした。
私が圧倒されてしまったのは、「脳神経の回路のシナプス状態の組み合わせ数は2の1000兆乗で、宇宙全体の原子の数をはるかに超えており、それらが絶えず時間と共に変化していくのだから、脳には“再現性”があるとは言えず、そういう意味では“科学”も個々人の解釈に委ねられた“文化”である」というニュアンスの記述。“客観的”とか“エビデンス”とかいう科学的と言われてきたことが、実は大した根拠とはなりえず、単なる一部の相関を表すに過ぎないのかもしれないと考えると、何人もの偉大な科学者が、最終的には「心」や「意識」の思索に耽りゆくのも無理からぬことだなぁ…と感じました。
学生時代に物理の基礎を学んだ際、「相互作用」の重要性を痛感しましたが、脳科学の話を読んでもやはり、「相互作用」が大事なんだなぁ…と思いました。人生長くやってみても、同じく「相互作用」が大切だと感じています(笑)。
次は、同じ著者の『単純な脳、複雑な「私」』にシフト~!!!
(池谷先生のおかげで、私の介護ヘルプ生活は、ずいぶん彩深いものになっています、ありがとうございます)
【手を握る】 土曜日、夫が父を連れて、ショートステイ先の母を訪問。食が細っていた母が、その日は、朝食は完食、昼も半分は食べられたと聞いて胸をなでおろしました。母は、長い時間、父の手を握り続けて、その訪問をとても喜んでいたということです。なんだか、心温まる光景が目に浮かぶ、夫からの報告でした。
(それにしても、この前の日に、ほぼ一日がかりで受診した血液検査のことは、もう一切覚えていなかったそうで、短期記憶は相当欠落してしまっています)
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