嵐迫る日曜午後、WIPO主催(モンルワ幸希氏担当)の「OSSと著作権」に関する講演を聴いてきました。OSSは、Open Source Softwareの略。かねてより、オープンソースのソフトウェアのライセンスはどうなっているのか気になっていたし、友人から、「ソフトウェアの著作権って詳しい?」と質問を受けたのを機に、ちょっと勉強しないと…と必要に迫られたので(苦笑)。。。
登壇者と講演内容は以下。
1.オープンソースソフトウェアと著作権:上野達弘教授
2.オープンソース・ライセンスの実務的留意点と対応策:宮下佳之氏
3.OSS Strategy and experiences in Japan and East-Asia countries:吉田正敏氏
4.情報へのアクセス促進に関するWIPOのイニシアチブ:モンルワ幸希氏
上野先生は、著作権法条文に沿って、ソフトウェアの著作物についての基本を丁寧に解説くださいました。ソフトウェアの職務著作につき、著作者人格権までも法人帰属にしてしまうのは日本独特で、アメリカ法にも“work made for hire”という職務著作規定はあるものの、日本ほど強力に法人尊重するものではないとのこと。また、同一性保持権についても、条約上は人格を毀損するような場合のみが対象なのに対し、日本法ではより強い同一性保持の権利を認めているとも。OSSライセンスは「コピーレフト」的とも言われるけれど、クリエイターが自己の作品についてOSSライセンスを行うためには、コピーライトがあってこそ成り立つのであって、著作権制度はOSSの前提であることを強調されていました。
SOFTICの役員でもある弁護士の宮下氏は、実務に即し、FOSS(Free Open Source Software)の歴史や、様々なOSSライセンスを解説くださいました。OSSの類型には以下の3種があり、少し前は(1)が多かったものの、最近はMIT Liceseが35%ほどで主流だとのこと。
(1)Copyleft型:GPL,AGPL → 結合又は連携動作するプログラムのソースコード開示義務
(2)"Weak"Copyleft型:LGPL,Mozilla,Eclipse
(3)非Copyleft型:Apache,BSD3,BSD2,MIT License → 改変箇所も開示義務なし
OSSライセンスがらみの裁判のほとんどは、(1)のGPL関連だとのこと(60件ほど?)。様々なOSS利用の場面ごとの留意点解説はとても勉強になり、SCOとIBMとの間で争われた裁判の話は、非常に印象的でした。SCOは過去に、自社のUNIXコードを、Linux上で使用していると思われる1500社ほどの会社に、片っ端からwarning mailを送り付け、5000億円近くの賠償請求を吹っ掛けたりしたそうですが、そんな中、IBMが矢面に立って、これらの会社をプロテクトしたのだとか! SCOはサブマリン特許の問題として主張し、IBMはGPL違反との主張をし、最終的にはIBM側の勝訴だった模様。これ以外にも、いくつかのOSSがらみの裁判例を教えていただき、参考になりました。今後、OSSの組み込み型製品が増えてくる中、OSSの無保証や損失補償対象外、特許侵害リスク等の検証作業は必須とのこと!
日本OSS推進フォーラム理事長の富士通・吉田氏は、現在100万種以上もある数々のOSSの成熟度評価や標準化・適用推進等、フォーラムの活動内容を詳細にお話しくださいました。もはや、OS/ミドルウェア/アプリケーションのあらゆる所でOSSが活用されており、今後は家電への組込LinuxだのクラウドだのAIだの自動運転だの、OSSの活用領域はますます広がるはずというご指摘。従来は特許の保有数が先進企業の評価軸として強かったけれど、最近ではオープンソースの利用度が一定の評価軸となりつつあるとも。競争領域と協調領域をしっかり意識して、外部Research & Innovationをうまく取り入れ、オープンイノベーションを推進する企業が強い傾向とのこと。こういう状況下、ライセンス契約の重要性は増し、開発部隊と法務・知財部隊との言語の相互理解もますます大切になっているそうで。
WIPOのモンルワ氏が最後に、WIPOの開発アジェンダとしての「知財に関する国際的合意における柔軟性」と「知識へのアクセス」に関する活動を紹介。WIPOやUNESCO、FTO等、特定の国の法律に依存しない国際機関でも利用できるCC 3.0 IGO license(裁判でなくADRでの解決)を2013年にポリシー化し、情報公開しているとのこと。オープンアクセスは、世界的な潮流になりつつあるのを感じました。
今回の講演会、興味本位で参加した割に、とても勉強になった半面、かれこれ十数年前に流行し、今やデフォルトかと思っていたOSS利用が、ライセンス契約等の場面では意外にまだ確立されていないことに驚きました。ためになる講演会を無料で開催してくださったWIPO 著作権法課の皆さまに感謝!!
【ESG知財】 アルファベット3文字つながりで(笑)。。。近頃、「ESG投資」なる言葉があちこちで聴かれます。ESGは、Environment Social Gevernanceの略。これは、知財の“ものさし”にも当然なりえますね。
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