画一化の学校教育と老人施設
“歳をとると、子どもに還っていくようだ”とはよく言われることですが、年とともに自分で出来ることが少なくなり、やがては身の回りの世話をすべて周囲に委ねることになるのは、まさに“赤ちゃん返り”かもしれません。多くの人が“老化”を恐れる最大の原因は、ココにあるとも思えます。
そうした時の流れに逆らうかのように、義母が入院しているリハビリ病院は、一度は衰え切った筋力や体力を、わずかでも回復させて、ケアの手数を少なくし、可能なら自律して生活できるよう、元に戻すことが目的の施設です。
9月下旬に入院した時には、ベッドからほとんど起き上がることすら出来なかった義母が、1か月半ほどのリハビリで、日中はほぼ車椅子で起きていられるようになり、一日に数分は、支えてもらいながら歩けるようになってきたのは、スゴイことだと感謝しきりです。ただ、付きっ切りで体調管理をしてくれるような人がいたら、きっともっと回復は速いだろうな…と思うことも多いです。というのも、お見舞いに行くと、たいていはボーッと座ったまま何もしないでいることが多いからです。
先日、そんな風に広間のTVの前でボーッとしている義母の脇に座り、おしゃべりを始めたら、同じフロアに入院しているおばあさんが私の隣に座りました。その人は、自室から手押し車を押して、自分で歩いてやってきました。
「もうお一人で廊下もお散歩できるんですね~」
と話しかけたら、
「もうすっかり自分で歩けるし、もっと散歩したいんだけど、出歩いてると怒られちゃうのよ」
とご不満のご様子(笑)。
「へ~? 廊下を勝手に歩いちゃいけないんですか?」
と訊くと、
「転んだりすると危ないと、心配してくれてのことだとは思うんだけど、私はもう、こんな手押し車もいらないのに、これを押しながらじゃないと、歩いちゃダメだって言われちゃってね…」
と退屈そうにおっしゃり、散歩したい・散歩したいと、しきりに繰り返しておられました。
義母は対照的に、リハビリするのは疲れるし嫌いだけれど、家に帰りたいから辛抱している…といった風で、できるものならずーっと一日中寝ていたいようなので、二人の意欲の違いには目を瞠りました。
後で夫に確認すると、「保険点数によって、一日でリハビリを受けられる時間の限度が決まっているらしいよ。それを超える時間は、座ってるか寝ていないとダメなのかも…」とのこと。それを聴いてなんだか、“画一的”という言葉が脳裏をよぎりました。小学校や中学校に、いろいろと能力も意欲も違う子どもたちが集められ、一律のカリキュラムで勉強するような感じで、介護施設でも、いろんな体力や意欲のお年寄りがいるにもかかわらず、一定のメニューでリハビリが行われているという事実。学校の教科書は他の人の10倍速で理解してしまうような子どもが授業時間を持て余してしまうように、規定時間しかリハビリさせてもらえない状況を、拘束されているかのように感じるお年寄りもいるのかもしれません。。。
理想は、一人一人の状況に合わせて、きめ細かくメニューを作ることなのでしょうが、なかなかそんな対応ができるわけもなく…。仕事熱心な介護士さんの中には、ジレンマを感じている人もいるのだろうなぁ~…と、患者と病院の双方が気の毒に感じられてしまいました。
あの元気なおばあさんが、座ったままでもできる運動を自分なりに編み出して、あっという間に回復・退院できますように――。そしてもちろん、義母の体力回復も引き続き応援しますが、「疲れる、寝ていたい」を連発し、数時間前の記憶も失くしてしまう義母に、どこまでリハビリを強制すべきなのか、悩むところでもあるのですが。。。
【入院費】 昨日、半月分の入院費を支払いに赴きましたが、結局1か月で20万弱くらい。リハビリ病院は医療保険が使えますが、老健は介護保険で運営されているそうで、薬の使用に関しても制限がかかるとのこと。老健入所中に医療行為が発生した場合、費用は施設に請求されるとかで、このあたりに、制度上の不備があるように思えてなりません。いずれの社会保険制度を利用するにせよ、私的契約とは異なり、画一的にならざるを得ず、オーダーメイドのサービスは望むべくもない…ということが、ひしひしと痛感される今日この頃。
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