中国の知財法制度の動き
先日、「中国の知財法制度の動き」という講演を聴いて来ました(cf.)。技術が一足飛びに躍進し、モラルも環境意識も徐々に上がって、法的な整備が急激に進んでいる印象を受けているため、実際のところどんな状況なんだろう?という疑問を抱きつつ――。
講演者の蔡(Sai)先生は、豊橋技術科学大学で教鞭を取っておられる中国人の方でした。母国で機械工学と法学を学ばれた後、日本で法学博士を取られたそうで、既に日本語も流暢に操っておられました!
講演内容は、中国における昨今の知財保護の全体的状況報告から、専利権保護に関する法制の動き、反不正競争法の主要部分解説、商標保護その他に関する改正の動向…と盛りだくさん。
大味の感想にはなりますが、“一帯一路構想”と並行して、中国が、国を挙げて科学技術強国を目指し、司法主導で国民の規範意識を本気で高めていく決意が感じられました。以下、自分用のメモと、後日要確認事項列挙。
・(知財系)民事訴訟事件数継増、刑事事件数減少
・民事一審事件の内訳(著作権64%、商標権20%、専利権9%、技術契約・その他数%)
・審査効率&質アップにより知財行政一審事件は減少傾向(商標5990件、専利1123件)
・北京、広州、上海の知財専門裁判機構に加え、南京、蘇州、武漢、成都にも
・民事賠償額の引き上げと懲罰的賠償適用推進(2-3倍~5倍:最大300万人民元)
cf. Panasonicの著名商標に関する訴訟では300万人民元の全額賠償成立
・裁判結果への満足度向上により、再審率45%減、調停による訴訟取下率大幅増
・専利法第四次改正案:間接侵害(幇助・教唆、従属説)、部分意匠導入、意匠権保護期間延長(15年へ)
・審査指南:ビジネスモデル特許のハードル下がり、専利権無効のハードルは上がる
・FRAND条項に関し、権利者にも被疑侵害者にも明確な非がない場合、差止は認めない(?)
・ダブルトラック問題解消:無効の抗弁は認められておらず、行政で無効の場合、人民法院は起訴却下
・反不正競争法(6~12条):不正行為の対象拡大
・商標の認定方法や審査基準改訂
・国家版権局「著作物の電子登録証の規範化に関する通知」
今回の講演内容は、今月発売の『年報知財法2017-2018』というムックにも書かれているそうなので、不明点を確認すべく、読んでみたいと思います。。。(うっ、お財布が…)
【3月イベント】 来年3月には、以下のようなシンポジウムも行われるそうです。
・3/10:デザイン法制シンポジウム「EUデザイン保護制度の現状と未来(仮)」
・3/30:情報・イノベーション保護国際シンポジウム
アメリカやドイツから錚々たるゲストがいらっしゃるようですが、英語で議論できるレベルでないと、参加不可なのかしらん…?
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