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2018年2月 8日 (木)

『量子力学で生命の謎を解く』

20180205_1  『量子力学で生命の謎を解く』をようやく読了。
 読後、そもそも論として、2つの「?」が私の中にあるのを感じました。
 1つは、「あまりにも人間中心で書かれてはいまいか?」ということ。ヒトも所詮は生物の一種族でしかないのだから、コマドリやカクレクマノミやオオカバマダラが、ヒトにはない感覚器や機能で世界を認識しているのは当たり前で、もっともっと身近な生き物の中の、ヒトには理解できていないこともドラマチックなんじゃないか…と。
 もう1つは、「宇宙を、3次元+時間という軸で見るのは、不自然なんじゃないか?」ということ。あくまで、たまたまヒトが認識できる世界が、
3次元+時間という枠組みなだけで、量子現象が“不気味”に感じるのも、それゆえのことなんじゃないか…と思っています。

 個人的に印象的だったのは、「分子生物学のセントラルドグマ」はもはや崩れ去っている、という記載。それまでは、DNAの転写において、情報は、DNAからたんぱく質へ、さらに細胞や生物の外界へと、一方向にしか流れない…という原理に基づいていたけれど、「適応的突然変異」というものがあることが、ケアンズという人の実験により明らかになったらしく、“相互作用”重視の私としては、さもありなん!と思いました(笑)。

 本書の根源的な問いは、「生命の起源、意識の起源の解明には、量子力学が必要不可欠なのではないか?」というところにあるのだと思いますが、素人考えでは、「そりゃぁ、当たり前では?」と思ってしまいます。マクロな世界(古典的な世界)は、間違いなくミクロな世界(量子の世界)の上層に成り立っている以上、作用効果の有無はさておき、量子力学が通奏低音のごとく何かしら機能していることは自然なことのように思えます。
 これまで、そういう世界に足を踏み入れることができなかったものが、21世紀になり、理論だけでなく、徐々に実験手法も編み出され、手が届くようになってきたということでしょうか…。
 上記の根源的な問いに先立って、現実的な問いとして、「酵素の働きの仕組み、光合成の仕組み」を解明することで、「エネルギー生成の効率を上げる」という副産物が得られそうな状況にあることを知れたのが、本書を読んだ収穫です。そして、とりあえずの課題は、「生命は、どのようにしてコヒーレント状態を長時間維持しているのか?」を探ることであり、それがどうやら、嵐の海を航海する船のような絶妙なバランスの上に成り立っているらしいこともわかっているそうで。
 今や、「合成生物学」なんていうジャンルの研究も盛んになっており、その手法は、トップダウン式に、今ある生命を書き換えるというものと、ボトムアップ式に、生きていない化学物質から生命形態を作り出すというものがあるのだとか!(今後ますます、生命倫理の検討も難しくなりそうですね。。。)
 また、こうした研究が進めば進むほど、「生命とは何か?」「心とは何か?」という、定義自体の困難性も高まることになる。。。リチャード・ファインマンの「作ることができないものは理解したことにならない」という言葉が数か所に引用されていますが、果たして
、ヒトが「生命」や「心」を作ることができる日なんて、来るんでしょうか…?!

 著作権についてしっかり考えてみたいと思っている矢先、本書を読んで、「そもそも生命こそが、“複製”から始まってるんだよなぁ…」と、当たり前のことを突き付けられ、正直複雑な心境でもあります

 数々の最新研究を出典明記の上で紹介し、著者たちの空想実験を気前よく披露してくれた本書は、ものすごい力作だと思います! そして、半世紀以上も前に、本書のテーマに関わる根本的な問題に予言的に言及していたエルヴィン・シュレーディンガーを、改めて見直した感じです(苦笑)。
20180205_2  途中で挫折して、本棚に放置したままのシュレーディンガーの評伝、読み返してみようかな…?(科学的な思索の跡というより、女性遍歴の跡…かもしれないんですが^^;;)

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