先週、「情報イノベーション国際シンポジウム」に参加しました。スタンフォード大やルートヴィヒ・マクシミリアン大ミュンヘンとの共催。たくさんの聴衆の中に、以前サインをいただいた方をお見掛けしたのですが、お声掛けできずに残念でした。
第一部は「ビッグデータの知財保護」、第二部は「標準必須特許の国際エンフォースメント」と題して、約5時間、ドイツ・EU・アメリカと日本の制度差を概観するため、専門家の方々のプレゼンとパネルディスカッションを拝聴。以下、自分用備忘メモ(粗っぽいメモをまとめただけなので、正確性に欠けますこと、ご容赦の程!)。
【ビッグデータ】
・無体財産たるデータは今後、原材料として、商品化・サービス提供の素材となる
・現在のデータ保護は、コンテンツ・コード・実体物の三層でパッチワークのように保護されているが、
EUでの目下の保護は、コードレイヤーでシンタックスレベルに限られている
・ビッグデータの権利の配分は、リースした方にもされた方にも生じる可能性もあり、複雑になる
・製造者責任も当然うまれる
・ドイツの特許法によると、データ生成物についての権利者は、データについても権利をもつ状態だが、
レイヤーについては検討中
・ドイツでDB保護が始まって20年経つが、新たな局面に入っている
・ビッグデータの保護法が三層(IP、著作権、競争法)になってしまい、取引コストが高まる
・複数の所有者が存在する可能性が高まる(誰が所有者であるべきか?)
・cf.:航空機の時刻表の権利は航空会社に(判例)
・EU域内ではDB保護が登録制に…?!
・PropertyからAccessibilityへ
・EUでは臨床データ(EPA)保護も…各国調和は可能か?(EUはセクターごと)
→今はアプローチは異なるが、いずれ議論できるはず→発明者に利益をもたらすには必要
・アメリカでは、IP Law以外にも、助成金や賞金など政策的な保護がなされている(cf.:NIH、NSF、etc…)
・日本では、不競法改正でのビッグデータ保護の方向
→法改正してまでの保護が必要かは検証中(インセンティヴの与え方は様々、副作用にも注意)
→財産権アプローチか、規制アプローチか…(ビッグデータでは、客体把握が困難)
・知財は、配分の公正に対して有効か?
【FRAND】
・SEP(標準必須特許)であるとは、どういうことか?
・必須ではないのに公開しすぎる傾向がある
・SEPであろうがなかろうが、勝訴率には有意な差はない?!
・NPE(実施主体でない)の勝訴率が有意に低い(戦略的には和解で収益を得ている)
・ドイツでの“Injunction”=STOP!:双方合意の有害ではない救済
・EUは独禁法的アプローチ(SEPではないかもしれない):ping-pongアプローチ
・2012年当時のサムソンのケース以降、SEP裁判は減少するかと思いきや…
→今も健在で、百以上の特許につきSEPを主張するケースも多い
・日本では行政機関の介入による強制実施だったが、没になり、目下第二の矢としてガイドライン作成
→パブコメ募集中!
・実務家からすると、NDAを交わしてもFRAND Offerは現実的ではない?
・HOLD UPはロジカルで経営者側が強硬主張、
HOLD OUTは実務の問題でライセンシー側が交渉テーブルにつかない等
・日本とアメリカはTopDownアプローチで、1つの特許を分割するなどしてプール
・アメリカと日本では、SEPであるか否かの検証費用が桁違い(日本が極端に少ない)
FRANDのping-pongアプローチに関し、実務家は、一筋縄では解決しがたい印象を抱いているのが、質疑応答の中から感じられました。私の理解度は非常に低いものだと思いますが、冒頭でどなたかがおっしゃっていた、「法律が現実に追いついていない、もっと先取りして政策を検討していかないと…」というお話しが、印象深かったです。4月16日には、「アジアにおけるビッグデータ保護」なるセミナーもあるとのこと。話題だけでも、わずかながらでもキャッチアップしていけたらいいな、と思っています。
【好物ディナー】 エイプリール・フールの昨日、私にFake Newsを流しまくった息子ですが、夕食は彼の好物三昧に。本日、入学式~!
【上位概念】 先日の時事放談で、自民党の鴨下さんが言った言葉に、ちょっとシビれました。――「国民は法律の上位概念である倫理・社会正義・公平性など、こういうもので政治に対して物差しをもっている」――
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