『ビジネスツールとしての知的財産』
複数の方からの推薦を受けて、先日、『ビジネスツールとしての知的財産』を拝読。
これまでも、一般向けの知財本は数々読みましたが、本書は一味も二味も違う独特なものでした。
・全編マンガであること(一部に解説テキストページはあります)
・スタートアップのITベンチャー視点で書かれていること
・弁理士や知財検定の知識は、あくまでビジョン実現に向けた推進剤として捉えられていること
・少年マンガ的な熱さがあること
・実在の人物がストーリーの中に登場すること
・著者の人生哲学が随所に織り込まれていること
諸々の独自な試みに驚きつつ、最も感銘を受けたのは、研究者である著者自らが、(あらかじめ美術の素養があるとはいえ)初めてまるまる一冊のマンガを描いていること! 執筆開始から1年くらいかかった旨の記載が「あとがき」にありましたが、構想段階から考えると、相当なご苦労があったのでは、、、と拝察しました。
出版元の“UPLOAD”という所を存じ上げなかったので調べてみたら、知財検定の支援等も行っている、知財領域専門のコンサルティング会社でした!(この点でも独特!) 今や、昔ながらの出版社でなくても、いくらでも本が刊行できる時代。なかなかメジャーな需要者層が見込めない領域でも、意欲的な試みが可能なことを垣間見せていただきました。
1点だけ、AIでの囲碁対局三番勝負の合間に、特許出願を超スピードで行い、それによって敵チームの斬新なアルゴリズム採用を封じたという場面があったのですが、こんな短期間での防衛テクニックが使用可能なのか?!、ということだけが、よくわかりませんでした。
作者名の“大樹七海”というのはペンネームだと思いますが、本書の主人公同様、ダ・ヴィンチ的な興味関心の広がりを持つ方のようで、狭い業界にあっては、いつかお会いする機会もあるかな~、と期待しつつ本を閉じました。初心忘るべからず、だな、というのが率直な感想です、ありがとうございました!
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