柔軟な権利制限規定
機械学習パラダイスを標榜する我が国著作権法の改正が間近となり、各方面が賑わっているようです。国際私法の観点から、国外での侵害幇助行為にも触手を伸ばす立法構成を取る国のコンテンツ利用に関しては、“パラダイス”は控えめに唱えておこうという考えもあるようです。私にはまだまだ、国際私法による渉外事件の結論の予測は、まったくもって立てづらいというのが正直なところですが、今回の法改正の魅力はアピールできるものと感じます。ただ、それ以前に、“大量に”(どのくらいを大量と言うのかの峻別は?)著作物を集める必要のある“生データの収集”の方が先に気になってしまうのですが――。
複数ある制限規定がバッティングした場合、最も緩い条文が優先される――らしいのですが、現実問題として、「情報解析のため、関連データを片っ端から全部コピーするぞ!」とデータ収集に着手したとしても、大した時間やお金をかけずにやすやすとデータを集めるのは至難の業。国内に1冊しかない持ち出し厳禁の書籍をコピーしたいとき(31①I との兼ね合い)や、パブリック・ドメインになっている個人所有の絵画や写真を生データとして取り込む必要があるときなど。複製パラダイス以前に、素材の入手段階で超えなければならない壁は結構ありそうです。生データの入手の困難性から、理想的な学習済みモデルを得るために本来あるべき生データの広範性に偏りは生じないのか、、、というのが気になります。。。非享受利用の抗弁がどのくらい切り札として効力を発揮し得るのかが明確にわからない。。。
また、情報解析する人達にとってのパラダイスは、著作権者にとってはインフェルノ。なにせ、知らないうちに大量のコンテンツがどこかのハードディスクにコピーされることになるわけで、やはり抵抗感は否めない――。一次資料として購入してもらえる場合もあるわけだから、一概に心配ばかりすることもないのでしょうが、法改正後の動向はやはり未知の領域。。。是非一度、何かしらの現場で、生データの収集から学習用data setの取りまとめ、そして機械学習のさせ方と学習済みモデルの出来方、そこへのInputとOutputの実際を、一連の流れとして観てみたいものです!
(※今回の改正に際し、プログラムの「利用」と「実行」の表記も微妙に修正されていることについての指摘。まだ全然きちんと読み込めていないので、どこかで時間を取らないと~。Webページのソースコードって、どういう扱いなんだったっけ…?)
【サイコガン】 先日何やら騒がしかったポプテTシャツに関する、福井先生のコラム。
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