バイ・ドール法、翻訳権10年留保
かつて特許事務所に勤務していた頃、国からの補助金を得てなされた、研究所や企業や大学の先生の出願案件があり、そういうものに遭遇するたび、「国民の税金を投入した研究の特許が、私的な組織や研究者個人に全面的に帰属しちゃうのって、おかしくない?」と、疑問に思っていました。なかなか資金投入の難しい基礎研究に補助金を出すのは大賛成なのですが、もしその成果で収益が出たら、国民への借金を返却した後の利益をインセンティブにすべきなんじゃないかと…。
不勉強なことこの上ないですが、昨年末、日本版バイ・ドール法というものが平成12年頃には成立していたことを知りました。国や特殊法人等からの委託による研究開発成果を、国でなく受託者に帰属させることで、産業競争力を高めよう、という構想。ふむふむ…、構想の意図には賛同するものの、複雑な心境――。
とはいえ最近は、個人と集団のあいだ、生物と無生物のあいだ、部分と全体のあいだ…、こうしたものものは実は連続的なものなんじゃないかという感覚が芽生えており、それが修論テーマの根っこにあるのですが、法学の論文にそんなことを書くわけにもいかないし、ひとつの論説をまとまりよく整えることの難しさを痛感しています。
【翻訳権10年留保】 年明けのゼミで、博士課程の方が発表し、「翻訳権10年留保」という旧法時代の政策的例外規定をご紹介くださいました。1970年以前の著作権法下の海外本についての取り扱いですが、日本が外国の知識をどんどん輸入していた時期、発行から10年以内に日本語化されなかった外国語書籍は、その後自由に利用しても構わない、というビックリ規定! かつて大出版社と、某書籍の版権をめぐって攻防を繰り広げた経験が記憶に蘇りました。あの本も、もし旧法下の発行物だったら、10年辛抱強く待っていたら、私も出版することができたのか?!と考えると、この規定の文化的価値が痛感されます。ゼミでは「自由利用」が論点となり、公衆送信とか電子出版も可能か?という方に話が流れていきましたが、個人的にはロイヤリティ支払いの方が気になってしまいました。翻訳出版は自由でも、当然ロイヤリティの支払いは生じるのかと思ったのですが、ネットで調べた限りでは、印税の支払いも無用だったとか…?! けれど、戦前であっても発行後10年以内にきちんと契約を結んで出された本も数多かったらしく、本来はそうあるべきなのでしょうが、旧法下時代の日本人の、西洋文明への好奇心が相当なものだったということなのか、、、。詳しく調べたら、すごく面白そう。さすが、博士を目指す人の着眼点はニッチだー!
【こち亀が主引例】 びっくり! ドラゴンボールのスカウターを引例に、Google Glassを拒絶するような感じ(笑)?
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